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なぜ同じ時代に…男子バレー“2人の最強リベロ”に非情な通告「どちらも世界レベル。でも1人しか選べない」小川智大が漏らした山本智大への本音
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byGetty Images
posted2024/06/07 11:07
パリ五輪代表入りを懸けてアピールを続ける小川智大(写真は今年5月の親善試合オランダ戦)
イラン戦に3-0で快勝した試合後、小川は心地よさそうに振り返った。
「海外でやっている藍と祐希さんが帰ってきて、彼らは初戦だったんですけど、僕らを引っ張ってくれて、すごく楽でしたね。余裕を持って試合することができました」
山本と交互に起用されていることについては、「スタートから出ることはあまり代表ではなかったんですけど、出たらやるしかないと思っていましたし、まあ、できるって、自分では思っていたので。それを見せられて良かったと思います」と淡々と話した。
ポジション争いには、自然体で臨みながら、強い意志ものぞかせる。
「もちろんオリンピックイヤーなんで、1試合1試合大事だし、アピールの場ということもわかっているんですけど、それはもうパリに向けて、代表に入ってからずっとそこに向けてやっていたので、ずっと大事な試合だった。やっぱりオリンピック前だし、『ここで、しくじれない』というプレッシャーもありますけど、それ以上に、世界ランキングを落とさないというチームファーストの意識は絶対に持っています。でも、自分の目標に対してもブレることはもちろんないです」
「バチバチしてもしょうがなくね?」
山本は29歳で小川は27歳。どちらが出ても世界トップレベルというリベロが、なぜ同時代に現れてしまったのか、1人しか五輪のコートに立てないなんて……と口惜しい。ただ同時代だからこそ、2人が高め合えたとも言える。
世の中にこんなにほっこりするライバル関係があるのかと思ってしまうほど、2人の関係は素敵だ。仲が良く、お互いをリスペクトし合う空気感。練習前や練習中、少しでも時間ができれば2人で1つのボールを持ち出し、ネットや台を使ってボールの落とし合いをして楽しんでいる。
「1人しか連れていけない」と言われた後も、「オリンピックは1人だけど、オレらには決められないんだから、バチバチしてもしょうがなくね?」と2人の関係性は変わらない。
小川は言う。
「出たいという気持ち、負けないという気持ちはもちろんあるけど、同じポジションのプレーヤーを下げるというより、自分が試合に出た時にしっかり活躍する。そこだけにフォーカスしていると思います、僕も、彼も」
どちらが試合に出ていても、外から見ているもう1人が助言を送る姿も変わらない。イラン戦でも山本のアドバイスがあったと小川は明かした。
「僕イランの選手とあまり対峙したことがなくて。オポジットのアミンとかあまり知らなかったので、球質がどんな感じだとか、どこのポジショニングがいいかみたいなことを(山本と)話して、『少し長めのほうがいいんじゃない?』みたいな感じで言われて、そこにいたら本当にボールが来ました」