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ブライアンvsトップガン、伝説の阪神大賞典「名勝負とは言えない」と田原成貴は語るが…武豊を称えるワケ「僕の人生はペケがいっぱいだけど」
text by
鈴木学Manabu Suzuki
photograph byTomohiko Hayashi
posted2024/06/01 11:03
ナリタブライアンとマヤノトップガン、伝説のマッチレースとなった1996年の阪神大賞典
実際、私も当時、栗東トレーニングセンターの調教スタンドで彼が「あんなのはマッチレースじゃない。本当のマッチレースは、テンポイントとトウショウボーイによる有馬記念だ」と報道陣に熱く語っていたのをよく覚えている。
「決してあのレースにケチをつけているわけじゃない。でも、テンポイントとトウショウボーイの有馬記念を見ているから。1977年の有馬記念で、テンポイントとトウショウボーイはスタートからゴールまで一騎打ちを演じている。『あれが本当のマッチレースだろう』と言っているわけです。ナリタブライアンと、有馬記念を逃げ切ったマヤノトップガンによる名勝負と言われるのは、負けた側としても非常に嬉しいですよ。後世まで語り継がれるというのは」
ブライアンとトップガンだったから…
それでも、こういうレース自体はよくあるものだと田原さんは言う。
「600メートルくらい2頭で後続を引き離して併走するというのは未勝利戦でだってあるでしょう。2勝クラスでも3勝クラスでもそういうことはいくらでもあります。それがナリタブライアンとマヤノトップガンだったから、野球でいえば阪神の村山(実)さんが投げて、巨人の長嶋(茂雄)さんがサヨナラ本塁打を打った天覧試合みたいだから名勝負と言われるようになった。名勝負には必ず2着馬がいるじゃないですか。逆に(全盛期の)ブライアンのように7馬身も突き放したら名勝負とは言われない。ケチをつけているわけじゃない。よくあるレースなんですよ。勝負的には未勝利戦でもよくあります」
1977年の有馬記念は、そうした「よくあるレース」ではなかった。
「トウショウボーイとテンポイントはスタートからゴールまで出たり入ったりして、しかも後ろにグリーングラスがいるんですよ。あれをやると、普通はグリーングラスに差されるんですよ。それが差されなかった。負けたトウショウボーイも凄いですよ。あれを僕は語っているんです。皆さん、YouTubeで見られるからぜひ見てくださいよ」
豊君が俺を潰しにいっているわけではないんですよ
テンポイントとトウショウボーイは最初から最後まで、相手はこの馬しかいないと定めて死力を尽くしたレースだったが、阪神大賞典はそうではなかったようだ。