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岡崎慎司が「もう監督信じない」「恐怖症なんです」…いま明かされる、欧州での苦闘 支えとなった「一緒に戦ってくれた家族」「プロジェクトX」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bySTVV
posted2024/05/19 17:00
現地時間5月17日、遂に引退を迎えたシントトロイデンの岡崎慎司。海外挑戦初期から岡崎を取材してきた筆者は現役終盤に意外な本音を聞いていた
前向きな岡崎が口にしたネガティブなこと
岡崎からはいつもポジティブな言葉を聞いていたように思う。ギラギラしていて、世間から見てすごいことをしているときでも「いやいや、まだまだ」とさらに上を見て、苦しい状況にいるのではという時でも「戦っているという実感があって燃えてきますね」と言い切る。だからファンもそんな岡崎を愛したし、誰もがその勇猛果敢な姿勢から勇気と情熱をもらったことだろう。
そんな岡崎が、意外にもネガティブなことを口にしたことがあった。
あれは2012-2013シーズン、シュツットガルト時代のこと。酒井高徳が契約延長するというリリースがクラブから送られてきたので、記者会見をやると思って駆けつけたところ、こちらの勘違いで会見をやる予定はないとのこと。勇み足だったかとがっかりしていたら、「ちょうど酒井と岡崎の二人が練習後で時間があるから、インタビューしてもいいですよ」と広報が機会を作ってくれたのだ。ありがたい。
酒井とは契約延長についての話をし、岡崎は右手のオペをした直後だったので怪我の状態などから話を聞いていた。しばらく話をしていたら、ドイツカップの話になった。当時、シュツットガルトが決勝に進むと対戦する可能性のあったドルトムントとバイエルン、両雄の試合が控えていた。
「対戦するならどっちがいい?」
何気なく聞いてみた。すると岡崎がこんな風に話したのだ。
あれ、恐怖症なんですよ
「バイエルンはもうあのゴールを決められた時の音楽が怖いですからね(笑)。(酒井に向かって)あの音楽コワイよな!?(酒井も「怖い!」と同意) あれ、恐怖症なんですよ。この前の試合で、ミスをして失点に絡んだじゃないですか。あの試合なんかもう一切観ないもんなあ」
そういう怖さがあるのか。雰囲気に飲まれるという表現があるが、飲まれるどころか心に深く刻まれた飲み込まれるような怖さ。どれほどの圧力が押し寄せてきたのだろう。
「いや初めてですよ、あんなの。3分くらいで2点取られたのも初めてだった。この先何点取られるんやろって。途中でリタイヤしたいと思ったのも、交代してホッとしたのなんて初めてですよね」
シュツットガルトのころは…
あの時の話を岡崎は覚えているだろうか? 引退を間近に控えた5月に話を聞く機会を作ってもらえた。あそこまで追い込まれるような試合というのはその後のキャリアで出会うことがあったのだろうか?