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岡崎慎司が「もう監督信じない」「恐怖症なんです」…いま明かされる、欧州での苦闘 支えとなった「一緒に戦ってくれた家族」「プロジェクトX」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bySTVV
posted2024/05/19 17:00
現地時間5月17日、遂に引退を迎えたシントトロイデンの岡崎慎司。海外挑戦初期から岡崎を取材してきた筆者は現役終盤に意外な本音を聞いていた
「あの試合のことは今でも覚えてます。いやあ、あんなことは……。あっても何回かしかないっすね。でもシュツットガルトのころはいろんなイライラが出ていたというか、そういうネガティブ感はめちゃくちゃあったんです」
清水エスパルスから移籍して初年度はレギュラーを獲得。順風満帆な海外デビューを飾っていたかと思ったが、相当に苦しい時期を過ごしていたと回顧する。
もう監督信じない
「日本からドイツに来て初めての年だったというのもあるけど、こんなにも違うのか、こんなにも理不尽なことってあるんだって思ってしまうようなことが多かったんです。僕が60分ぐらいまで本当にノーミスで完璧だったのに、たった1回ミスしたら監督が交代の準備しているのが見えるみたいな。正直『もう監督信じない』って思ってしまったこともあるかな」
当時の取材メモを見返してみると、思うようにいかないもどかしさをどうにか押しとどめようとしている談話が少なくはない。こちらの想像以上に苦しい思いにさいなまれていたのかもしれない。
だが、気持ち的に追い込まれていても、岡崎は屈しなかった。ネガティブなことに押しつぶされそうになっても、ファイティングポーズを解くことはなかった。
不屈の精神力、その理由
なぜまた立ち上がることができたのか。どんなことに影響を受けて自身を奮い立たせる術を身に着けてきたのだろう?
「本もだし、あとアニメや漫画とかも。スポーツ漫画が好きだし、ジャンプの熱血系も。弱いとこから這い上がってみたいな。あと高校時代に《プロジェクトX》っていう番組を黒田先生(滝川第二高の黒田和生監督)から絶対に毎週見なきゃいけないっていうのがあったんですよ。そこで学んで共感したのか、共感したから学んだのかはわかんないですけど、成功するためのストーリーをカッコいいって僕は思ってました。身近でも泥臭く戦う選手の姿を見て、やっぱりこういう生き方がいいな、人間臭いところが好きだなっていう自分なりの感覚があったんです」
あこがれの姿に自身を投影させて、ポジティブな意味で《勘違い》ができる人は強い。ヒーロー願望は子供のころ誰もが持っていたもの。そしてその願望に浸れている時、自分はだれよりも強くなれる気がする。
両親、そして妻への感謝
「あとやっぱり親ですね。両親がポジティブな人たちだったというのも大きいです。子どものころから出会ってきた人の多くが否定的じゃなかったというのもありがたかったです」