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守備の痛恨ミス→登録抹消に「初めて野球が怖いと思った」DeNA蝦名達夫が頼ったのは「鈴木誠也」だった 今季スタメン定着、復活の真相
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/20 11:02
今季、一軍で活躍を見せる蝦名。昨季は42試合の出場にとどまっていたが、「どん底」と言える時間を過ごしたという
「脇腹なので、なかなか怖さが取れずに、自分がやりたいと思うスイングができない状態が続きました……」
重大なミス
フルスイングが代名詞の蝦名にとって、脇腹の痛みは苦しみと同時に焦りを生んだ。6月中旬にようやく一軍登録されるが、7月17日の広島戦(横浜スタジアム)で重大なミスをおかしてしまう。1対1の7回表、2死二塁の場面、秋山翔吾がライト前へヒットを放つと守備に入っていた蝦名はバウンドに合わせて立ち止まって捕球し、決勝点を与えてしまう。積極的にチャージをかけていればランナーを還すことのない、防げたミスだった。
蝦名は「久々のスタメンでヒットが出たこともあり気の緩み、隙があった……」と猛省したが、この翌日、登録抹消されてしまう。その後も一軍とファームを行き来するなど定着することができず、昨季は42試合の出場にとどまり、打率.140という不甲斐ない成績でシーズンを終えている。
去年は本当に“どん底”、きつかった
ライバルの多いDeNA外野陣。キャリアが豊富な佐野恵太や関根大気、桑原将志だけではなく、若手の梶原昂希ら自分よりも若い選手の台頭もあり、蝦名の存在感が薄れていく。胸の奥からせり上がってくるような危機感。蝦名は振り返る。
「去年は本当に“どん底”っていうか、これまでそれなりに苦しい経験をしてきましたが、一番きつかった。それこそあの守備のミスから、不安要素を自分の中に作ってしまって、バッティングも上手くいかず……。何て言うのか初めて“野球が怖い”と思ってしまったんです」
たどり着いた思考法
静かに噛みしめるように蝦名は言った。情熱を傾け楽しかったはずのプレーが、心からエンジョイすることのできないジレンマ。野球人生で初めてといっていいほどの喪失感に襲われた蝦名ではあったが、持って生まれたド根性で自らを奮い立たせる。