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何度も怒られた清水邦広「でも、永野さんは愛がある」“空気をピリッとさせるリベロ”永野健38歳が男子バレー界に残したもの「絶対メダル獲れる」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byPanasonic PANTHERS
posted2024/05/14 11:01
今季限りで現役を引退したリベロ永野健(38歳)。パナソニックパンサーズのタイトル獲得に数多く貢献し、日本代表でも活躍した
昨年、永野は現役選手でありながら、アジア競技大会に出場したB代表でコーチを務めた。今後も、バレーボールを始めたばかりの子どもたちや10代の学生、Vリーグで活躍を誓う20代前半の選手たちなど幅広い対象に向けて指導者としてのキャリアを歩んでいくことを決めているが、「すべてを懸けてやってきた」と語る“日本代表”に対しては、特別な思いを寄せる。
「日本代表のヒリヒリする感じ。あれは経験しないとわからないし、苦しいこともいっぱいあって。僕らは結果が出なかったけど、その結果もすべて受け入れて前に進んできたから、今の代表のヤツらも本当に頑張ってくれ、って心から思いますよ。僕もBチームでコーチとして手伝う中でAもBも関係なく、日本代表の力になれるなら何でもするし、必要なら自分の経験も話します。
でもそんな必要もないぐらい、今の代表、本当に強いじゃないですか。やると決めたら横も見ず、まっすぐ前に進んで成長しようとする。イケイケの若手もいれば、頭を使えるセッター関田(誠大)もいて、柔軟で野心を持った石川(祐希)がいる。こんなメンバーが揃うのはなかなかないし、ほんまに奇跡ですよ。だからね、オリンピックで絶対メダルを獲ってほしいし、マジで獲れると思うんですよ」
記者が少ない…11年前のキックオフ会見
2013年の日本代表キックオフ会見。前年に女子代表がロンドン五輪で銅メダルを獲得したことで、記者はその周りにごった返していた。対照的に男子代表の前に集まった記者の数は、選手より少なかった。そして、記者の質問に対して丁寧に応じる男子選手の中心に、永野もいた。
「日本の男子バレーはなぜ急に強くなったのか」
あれから10年近くが過ぎた今、飽きるほど聞かれた問いに対して、ハッキリと答えたい。
たとえ結果が出ずとも、全力で日本代表として戦って来た先人たちがいる。強く、優しい守護神が築いた礎のうえにあるのが、今この時だ。
コートでの姿がもう見られないことは寂しい。でもきっと、指導者になっても、ここぞという時に“声”がベンチから聞こえてくるだろう。
「まだ終わってねーだろ、ここからだろ」
愛すべき守護神がユニフォームを脱ぐ。その熱き心と魂はこれからの世代に受け継がれていく。