もう1つが、代表のハンデを補う上で、大きな効果があるからだ。選手たちが普段プレーするクラブチームとは比べものにならないほど、代表では活動時間が制限される。だからこそ工夫が必要なのだ。

「役割をこなすというチームカルチャーが生まれているからこそ、活動期間が短いなかでもすぐにチームとして機能できるのだと思いました」

　だからこそ、今村に求められた役割が変わったというのは、ホーバスHCのチーム作りにおいては大きな意味を持つのだ。

©Hideki Sugiyama

　ただ今村は、激しい競争のスタートラインに立ったに過ぎないということは理解している。また、バスケW杯に出場した選手たちにはレギュラー争いの上ですでにアドバンテージがあるだろう。そんな状況を理解しているからこそ、悲観することも焦ることもない。

「プロバスケットボール選手になった時から、『世界で戦える選手になりたい』と強く思ってきました。それが実現できるのがパリオリンピックのような大会です。それに、国を背負って戦えるのはすごく光栄なことだし、重みがありますよね。僕は、その立場を望みたい。メンバーに選ばれたいんです」

「チームを勝たせる」ことが代表入りへのアピール

　5月10日、Bリーグの頂点をかけたチャンピオンシップが始まった。長いシーズンを勝ち抜いた8チームによる、頂点を決めるクライマックスだ。今村が牽引する琉球は、過去に2度も頂点に立ったアルバルク東京の本拠地に乗り込んで、準々決勝を戦う。

「今回はアウェーでの試合ですし、チャレンジングなCSになると思います。だから、『何としてもチームを勝たせる』覚悟で、それにふさわしいプレーを出さないといけない立場だと思っています。

　そして、自分の強みである、チャンスをクリエイトする力や（ゴールに近い）ペイントエリアにアタックするプレーの精度を高めていくことが、パリのメンバーの選出にもつながっていくはずです。そう信じて、強い気持ちを持って戦っていきたいと思います」

　そんな今村の想いが結実するとき、日本の歴史を変えた沖縄アリーナで悔しさをかみしめたことに「大きな意味があった」と心から笑える日がくるはずだ。