なぜ、今村はそこに手応えを感じたのか。1つにはもちろん、自分の努力が認められたからである。ただ、もう1つ、大きな理由がある。現在の代表チームでは任される役割に大きな意味があるからだ。

　実は役割分担こそが「なぜホーバスHCが代表チームで結果を残せるのか」という問いの答えでもある。

　彼は東京オリンピックでは、女子の日本代表を率いて史上初の銀メダルを獲得した。昨年のW杯では男子を率いて、パリオリンピック出場を決めた。

　その躍進の要因として共通しているのが、ホーバスHCの掲げるこんなメッセージだ。

トム・ホーバスHC　©FIBA

「Know your role」

　アメリカ人ながら普段は日本語を使って指示を送るホーバスHCだが、大事なメッセージをときおり英語で伝えることがある。「Know your role」とは「自分の役割を知れ」という意味だ。

　今村は言う。

「それぞれの選手の役割が明確になっている分だけ、プレーに迷いがなくなるのかなと。それが徹底されているからこそ強さにつながっていると思います」

ホーバスHCが重視する「選手それぞれの役割」

　実は東京オリンピックでホーバスHCからキャプテンを任されていた高田真希も以前、銀メダル獲得の要因を以下のように証言していた。

「HCが各選手としっかりコミュニケーションを取って、『君にはこういうことを求めている』と明確にしてくれたのが大きかったです。若い選手から、私のようなベテランまで、何を求められているのかが明確になっていたので、良いプレーができて。それがメダルにつながったと思います」

ホーバスHCのもと、東京五輪で銀メダルを獲得した女子バスケ代表の高田　©Naoya Sanuki/JMPA

　ホーバスHCの求める役割分担が男女問わず日本代表の力を引き上げられた理由は、大きく分けて2つある。1つ目が、日本人の気質や文化に合っているところだ。今村は言う。

「日本人は真面目で、求められることを徹底できるということは、バスケに限らず日本の多くのスポーツでも共通することだと思うんですよね。それをトムさんが徹底させたことで、代表チームでは役割をしっかりこなすことがチームカルチャーになっています」

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