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監督は“公立大卒→現役社長”の超異質キャリア…春季大会で履正社&大阪桐蔭を連続撃破 大阪学院大高の衝撃「目標は大阪1位じゃなく日本一」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/05/07 17:02
現役の社長でもある辻盛英一監督のもとで大阪桐蔭、履正社の大阪2強を撃破した大阪学院大高。もちろん髪型は丸刈りからロン毛まで多様だ
0-0の均衡が続く中、6回にその均衡を破る1点を失ったが、9回表に相手のミスなどに乗じて逆転した。1点のリードを守る9回裏の守りは「大阪桐蔭さんの打者も最後までスイングが強かったですし、いつ追い上げてくるのか分からなかったので、1人1人のバッターに集中していくことだけを考えました」と細心の注意を払った。
試合前は、1、2点の失点は覚悟していたというが「今日はコースにしっかり投げ分けて頑張ってくれたピッチャーのお陰です」と背番号2は胸を張った。
監督は書籍も出版の「伝説の営業マン→現役経営者」
そんな選手たちを、23年3月に就任したばかりの辻盛英一監督は誇らしげに見つめながらこう明かす。
「2強時代を終わらせるつもりで僕は監督になったんです。そのつもりで彼らもうちの学校に来てくれています。履正社戦で勝って今日も勝てて、ひとつの目標は達成した感じはあります」
辻盛監督は、かつて大手保険会社に勤務し営業成績が13年連続で売り上げナンバーワンとなった経歴を持つ。現在は「株式会社ライフメトリクス」を経営し、著書『営業は自分の「特別」を売りなさい』(あさ出版)も上梓。そのかたわらで10年から22年までは母校でもある大阪市大(現大阪公立大)で監督を務め、17年秋にはチームをリーグ優勝に導いた。
昨年春に高校野球の監督となり、朝9時から15時までは会社勤務ののち、16時からは大阪学院大高校のグラウンドに顔を出している。週末の練習試合でも指揮を執り、遠征にも同行する日々を送っており「プライベートの時間なんて全くないんですよ」と笑うが、野球漬けの日々こそ、辻盛監督が望んだ生活だった。
22年には人工芝に大きな屋根のついた室内練習場や全面人工芝の野球場が完成した。指揮官が自費でラプソードや最速170キロ以上に設定できる打撃マシンを購入し、速球にも負けない打撃練習ができる環境も整えた。
ただ、大学生と高校生の指導には多少の違いがある。指揮官は続ける。
「大学生はある程度放っておいても自分たちで何かをやろうとしますが、高校生はそれができる子がなかなか少ないので、どこかで目線を送っていないといけない。だから今の方が拘束される時間は長いですね」
グラウンドにいる時間が長くなれば、どうしてもあれこれ言いたくなる。