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ケンタッキーダービー制覇まであとわずか…フォーエバーヤング“3着惜敗”の真の価値とは?「坂井瑠星の騎乗も見事」「あの“左手”は妨害なのか」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byGetty Images

posted2024/05/06 17:03

ケンタッキーダービー制覇まであとわずか…フォーエバーヤング“3着惜敗”の真の価値とは?「坂井瑠星の騎乗も見事」「あの“左手”は妨害なのか」<Number Web> photograph by Getty Images

現地時間5月4日に行われたケンタッキーダービー。フォーエバーヤング(写真中央)は直線で壮絶な叩き合いを演じ、僅差の3着に敗れた

 それに対してケンタッキーダービーは今年で150回目を迎える伝統の頂上決戦で、「スポーツで最も偉大な2分間」とも言われているアメリカ競馬の牙城だ。日本馬で初めて参戦したのは1995年のスキーキャプテンで、武豊を背に14着。これまでの最高着順は、2019年マスターフェンサー、2023年デルマソトガケの6着だった。

 日本人騎手では、2016年にラニで臨んだ武豊の9着が最高着順だったが、今年、坂井瑠星と、5着に入ったテーオーパスワードの木村和士(北米を拠点に騎乗)が更新した。

生産頭数は日本の倍以上…アメリカ競馬のスケール

 アメリカは世界最大のサラブレッド生産国で、日本の倍以上の生産頭数を誇る。競馬場はすべて左回りで、コース幅が広く取れて観客に近い外側のメイントラックはダートである。日本のダートが「砂」なのに対し、アメリカのダートは「土」に近く、雨が降ると田んぼのようにぬかるむが、そのかわり、クッションがよく、日本の芝に近いほど速い時計が出ることもある。

 いささか乱暴な言い方になるが、アメリカンフットボールやインディカーレースを見てわかるように、アメリカのスポーツのスタート地点は「アンチヨーロッパ」が基本で、自分の国でやる限り、ほかのどの国にも負けない形を編み出す。そして、MLB(メジャーリーグベースボール)もそうであるように、アメリカ国内の王者であっても「ワールドチャンピオン」と称する。

 競馬も、芝がメインのヨーロッパの馬に負けないよう、先述したように、メイントラックをダートにしたわけで、その最高峰がケンタッキーダービーである。

 1971年にベネズエラ調教馬のキャノネロが勝っており、これが唯一の外国調教馬による優勝だが、この馬はアメリカ産なので、アメリカのホースマンは「外国にやられた」という感覚ではないかもしれない。

 私は1990年の夏に初めてアメリカの競馬場(アーリントン国際競馬場=当時の名称)に行き、洗い場につながずに馬を洗ったり、狭い厩舎内の通路で曳き運動をしたり、放馬しても「ポニー」と呼ばれる大型馬に乗った関係者が馬体を寄せて簡単につかまえたりするシーンを見て衝撃を受けた。女性の調教助手が馬房で横になった馬に添い寝して歌っているかと思えば、どの騎手も凄まじいアクションで追いながら馬を真っ直ぐ走らせている。

【次ページ】 坂井瑠星の騎乗も“ワールドクラス”だった

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