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ケンタッキーダービー制覇まであとわずか…フォーエバーヤング“3着惜敗”の真の価値とは?「坂井瑠星の騎乗も見事」「あの“左手”は妨害なのか」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byGetty Images
posted2024/05/06 17:03
現地時間5月4日に行われたケンタッキーダービー。フォーエバーヤング(写真中央)は直線で壮絶な叩き合いを演じ、僅差の3着に敗れた
当時は、岡部幸雄氏や、武豊が向こうの条件戦を勝つだけで「世界のオカベ」「世界のユタカ」と報じられた。そんなふうに見上げる高みにあったアメリカ競馬の頂上決戦で日本の人馬が激戦を繰りひろげ、負けたら国内のレースと同じように悔しがるシーンを見て、日本の競馬はここまで来たのだな、と隔世の感ではないが、嬉しくなった。
坂井瑠星の騎乗も“ワールドクラス”だった
前述したスキーキャプテンも、1998年に日本調教馬として海外GI初制覇を果たしたシーキングザパールもアメリカ産馬だった。
ところが、フォーエバーヤングは、父リアルスティールの日本産馬(ノーザンファーム生産)で、馬主がサイバーエージェント代表の藤田晋氏という、純然たる「チームジャパン」である。リアルスティールの父はディープインパクトで、その父はケンタッキーダービーを勝ったサンデーサイレンスだから、サンデーの血が母国で爆発したとも言える。日本のホースマンもファンも、「世界最高峰」というと、フランスの凱旋門賞ばかりを思い浮かべがちだが、生産界をあげてサンデーの血を熟成しているうちに、いつの間にか、「もうひとつの最高峰」であるアメリカのダートの頂上に近づいていたのかもしれない。
私は、かつて3頭の日本馬が2着になった凱旋門賞より、ケンタッキーダービーのほうが日本馬から遠いタイトルだと思っていたのだが、認識を改めるべきなのか。
それにしても、自身が管理したリアルスティールの産駒で、弟子の坂井瑠星を主戦とし、前走のUAEダービーまで5戦全勝でここに来た「世界のヤハギ」の手腕には感服するばかりだ。
「勝てなかったことは本当に悔しいです。まだ負けていなかった馬で負けてしまいましたけど、この馬の背中にふさわしいジョッキーにならなければいけないと思います」
そう話した坂井の騎乗も見事だった。勝負所で、もうひと呼吸動くのが早かったら最後の伸びが鈍っただろうし、遅くなっていたら他馬に先に行かれてもっと外を回らされることになったかもしれない。