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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
<NHKで告白>“イップス”に悩むDeNA投手を救ったのは「長崎県知事」だった プロ3年目・徳山壮磨24歳が明かす「初めて一軍のマウンドに立つまで」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/06 11:05
チームの苦境に現れ、ピンチを救ってきた徳山壮磨。イップスで苦しむ若手投手を救ったのは、自主トレ先での長崎県知事との出会いだった
異例のイップス公表に込めた思い
徳山自身、もし仮にイップスが再発しても「戻れる場所がある」と冒頭で語っており、もはやそこに不安はない。思えば、過去イップスになった選手は数多いるが、現役選手がこのように公表するのは異例のことだ。そこには徳山ならではの想いがあった。
「プロにかぎらず、アマチュアの選手、それこそ小学生や中学生の子どもたちでも投げたいのに投げられない人って多いと思うんです。けど僕は投げられるようになりました。いつか絶対に投げられるんだよって思ってもらいたかったし、目標にしてもらえる選手になりたいというのが一番にあったんで、公表することにしたんです」
同じ症状で苦しんでいる多くの選手たちの希望になりたい。諦めることなくトライしていれば、必ずや思うようにボールが投げられる日はくる。だからこそ徳山は、今日もマウンドに立ち、相手バッターだけに集中し、腕を振っている。どんな厳しい場面であろうが、徳山はもう一人の自分と対話し、痺れるような緊張感の中、勝負を楽しんでいる。
もう以前の自分とは違います
「正直、実績のない自分が投げさせてもらってもいいのかなって場面もあるんですが、チャンスですし、ありがたいと思いながらピッチングしています。この立場は絶対に手放したくないし、打ち込まれれば不安になることもあるんですけど、もう以前の自分とは違いますし、場面場面でどう攻めて、どう楽しむかに集中しています。当たり前のことじゃないし、先はないと思いながら、1年間、腹をくくって乗り越えていきたいと思いますね」
目を細め、頷くように徳山は言った。苦しかった過去があるから今の自分がある。普通ではできない経験をさせてくれたイップスよ、さようなら。まだまだ先の長いシーズン、これからも窮地が訪れ手痛い経験もするだろうが、それを乗り越えた先に果たして何が見えたのか、またゆっくりと話を訊いてみたい。
<前編とあわせてお読みください>