「これは自分で言葉を発し、聞き入れるというやり方で、例えばピンチの時にマウンドに上がった際に『こういう場面で投げられるのはありがたいことや』とか『これは成長できるチャンスやぞ』とか言葉にして吐き出すことで体がリラックスをして、いいパフォーマンスに繋がるんです。だから常に、自分以外にもう一人の自分を作ることを意識していますし、語弊はあるかもしれませんが、自分の都合のいいように物事を持っていき、相手へ向かっていくことを心掛けていますね」

　とにかく肝心なのは「自分がどう思うか」。これにより負のサイクルとなっていた内なる不安感は外へ外へと向き、徐々に冷静にミットを目掛けて腕を振れるようになっていった。

大家友和からの提案

　これで苦しくなっても立ち返ることのできる“ゼロ地点”がひとつできた。

　そして技術面では、自分の感覚を大事にしながら、いろいろな情報を取捨選択するように努めた。一緒になって打開策を模索してくれたのは、昨年までファーム投手コーチを務めていた大家友和氏だった。

「大家さんからは『足を上げるからフォームがブレる。コンパクトにしてみないか？』と提案を頂いて、まずはクイックからやっていこうと。よりシンプルに自分の感覚を大事にしようって」

日米でプレーし、指導にさまざまな引き出しを持つ大家　©Asami Enomoto

　徳山いわく「性格上、3つも4つもいろいろやろうとして、それが混乱を招いていた」というが、真面目な気質ゆえにプロになり周囲のアドバイスを聞き入れすぎてしまい自分の長所を見失っていた。

「だから自分でこれがいい、と感じたポイントを絶対に消すことなく土台にして、いろいろと積み重ねていった感じでした。まずは自分にしかわからない感覚を信じて、あとは必要だとおぼしき意見を取捨選択していくことで、自分の軸を作っていった感じですね」

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