近鉄を過ぎ去ったトルネードBACK NUMBER
「メジャーなんてありえない」が日本の常識でも…野茂英雄26歳は「メジャー挑戦の夢」を語り続けた 近鉄番記者が聞いた「野茂のホンネ」
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byMasato Daito
posted2024/05/02 11:04
近鉄のエースとして1995年の活躍も期待されていた野茂。しかし、周囲にはメジャーへの思いを隠さないようになっていた
「折り合いはつきませんでした。それ以外、言いようがない」
交渉後、野茂は金額提示に至らなかったことを明かし、具体的な要求に関しても「僕の答えとしては、ノーコメントです」と第1回の交渉後とは打って変わって、今回は一切、その交渉経過の詳細を明かさなかったのだ。
何かが、おかしい
球団社長の前田泰男も「要は、合わなんだ、ということや。それだけや。向こうは、どう言うてた? 金額? 俺に聞いても知らんで。具体的なことまでは発表する必要ない。それで、よろしいやんか」と関西弁の切れ味が、いつになく悪かった。私の取材メモにも、何度となく「…」が記してあった。前回の交渉後での饒舌な説明とは一転、言葉に詰まり、言いよどんでいたのだ。
何かが、おかしい。
<つづく>