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ドジャースファンが絶不調・野茂英雄にブーイング、ラソーダは野茂を監督室に呼び寄せた…メジャー1年目の窮地に見た“ラソーダ監督の人心掌握術”

posted2024/07/11 11:04

 
ドジャースファンが絶不調・野茂英雄にブーイング、ラソーダは野茂を監督室に呼び寄せた…メジャー1年目の窮地に見た“ラソーダ監督の人心掌握術”<Number Web> photograph by Koji Asakura

新人王を獲得したメジャー1年目。じつは終盤、爪とマメ、そして不調に悩まされていた野茂。本拠地のファンからブーイングをされた試合後…

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喜瀬雅則

喜瀬雅則Masanori Kise

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Koji Asakura

 今から29年前の1995年7月11日、日本選手として初めてオールスターに選出され先発登板を果たすなどドジャースでトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄。しかし後半戦に入り、爪とマメの問題に苦しめられ、明らかに変調を来していた。当時取材していた記者が振り返る、終盤戦の苦闘と地区優勝にいたるまで。(全14回の第12回/初回から読む)

野茂vsサミー・ソーサ

 右手中指の“爪&マメ問題”で延期されていた野茂の登板は、9月5日から中6日空いた9月12日のカブス戦だった。シカゴ・リグレーフィールドは、ツタの絡まる古き良きスタジアム。そのクラシカルなメジャーらしい空気も、野茂のパフォーマンスを後押ししたのかもしれない。

「きょうは、爪のことを気にして投げたのでピッチングは楽しめなかったけど、爪の状態は問題なかったと思う」

 8回を被安打6の1失点。当時のカブスには、現役通算609本塁打を放ったサミー・ソーサがいた。マーク・マグワイアが70本、ソーサが66本という、世界中の大注目を浴びた本塁打王争いは、後の1998年のこと。野茂との初対戦となったのはその3年前の1995年。ソーサは36本塁打・34盗塁をマークし、自身2度目の「30―30」を達成する活躍を見せたシーズンだった。

 メジャーを代表する強打者という地位を、完全に確立していたカブスの主砲を、伝家の宝刀・フォークで3打席連続での空振り三振に仕留めている。

「特にコントロールと速球がよかった。あれだけ投げられれば、爪は問題ないだろう」

 投手コーチのデーブ・ウォーレスも、野茂の復活ぶりを称えた。

温厚な投手コーチがいらだち…

 8回終了時で5点リードがありながら、93球で降板させた理由を、ラソーダ監督は「これから先にリスクを負いたくないからだよ」と説明。ロッキーズとのし烈な地区優勝争いを睨み、野茂の“力”を温存させるという方針を明かし、次の登板予定をロサンゼルスへ戻っての19日、ジャイアンツ戦に中6日で臨ませることも発表された。

 しかし、今度は爪問題から一転、野茂の不調がクローズアップされることになる。

【次ページ】 野茂の空虚感がにじんだコメント

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