近鉄を過ぎ去ったトルネードBACK NUMBER
ドジャースファンが絶不調・野茂英雄にブーイング、ラソーダは野茂を監督室に呼び寄せた…メジャー1年目の窮地に見た“ラソーダ監督の人心掌握術”
posted2024/07/11 11:04
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Koji Asakura
野茂vsサミー・ソーサ
右手中指の“爪&マメ問題”で延期されていた野茂の登板は、9月5日から中6日空いた9月12日のカブス戦だった。シカゴ・リグレーフィールドは、ツタの絡まる古き良きスタジアム。そのクラシカルなメジャーらしい空気も、野茂のパフォーマンスを後押ししたのかもしれない。
「きょうは、爪のことを気にして投げたのでピッチングは楽しめなかったけど、爪の状態は問題なかったと思う」
8回を被安打6の1失点。当時のカブスには、現役通算609本塁打を放ったサミー・ソーサがいた。マーク・マグワイアが70本、ソーサが66本という、世界中の大注目を浴びた本塁打王争いは、後の1998年のこと。野茂との初対戦となったのはその3年前の1995年。ソーサは36本塁打・34盗塁をマークし、自身2度目の「30―30」を達成する活躍を見せたシーズンだった。
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メジャーを代表する強打者という地位を、完全に確立していたカブスの主砲を、伝家の宝刀・フォークで3打席連続での空振り三振に仕留めている。
「特にコントロールと速球がよかった。あれだけ投げられれば、爪は問題ないだろう」
投手コーチのデーブ・ウォーレスも、野茂の復活ぶりを称えた。
温厚な投手コーチがいらだち…
8回終了時で5点リードがありながら、93球で降板させた理由を、ラソーダ監督は「これから先にリスクを負いたくないからだよ」と説明。ロッキーズとのし烈な地区優勝争いを睨み、野茂の“力”を温存させるという方針を明かし、次の登板予定をロサンゼルスへ戻っての19日、ジャイアンツ戦に中6日で臨ませることも発表された。
しかし、今度は爪問題から一転、野茂の不調がクローズアップされることになる。