近鉄を過ぎ去ったトルネードBACK NUMBER
野茂英雄に米スター選手が直接伝えた感謝「メジャーリーグはキミに救われた」…負けても称賛されたプレーオフの先発 「トルネード旋風」は何を残したか
posted2024/07/11 11:06
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
Koji Asakura
プレーオフ敗戦後、ラソーダは野茂に対し…
ディビジョンシリーズの相手は、ナ・リーグ中地区優勝のシンシナティ・レッズ。5試合制で先に3勝すれば、次なるステージのリーグチャンピオンシップに進むことになる。
発表された先発は、1戦目マルティネス、2戦目バルデス、3戦目が野茂だった。
「決まったよ。先にシンシナティに行って、待っていた方がいいんじゃない?」
広報部長から、ジョーク交じりにこう告げられた。
本拠地・ドジャースタジアムでの1、2戦目を落とし、後のない敵地での3戦目。しかし崖っぷちのチームを救うだけの力は、もう野茂には残っていなかった。
3回、ロン・ガントに先制2ラン、続く4回にもブレット・ブーンにソロ本塁打を許すなど、5回までに3失点。6回にヒットを2本続けられたところで途中降板。レッズの勢いを止められず、ドジャースは3連敗。シリーズ敗退が決まった。
野茂英雄の1995年が、ここで幕を閉じた。
「ノモは、まずまずだったよ。疲れだってあっただろう。その中で勝負したんだ。今シーズン、これだけやってくれたじゃないか」
悔しさを押し隠し、ラソーダはまず、野茂の1995年を褒め上げた。
楽しかったよ、ノモ
メジャー1年目。6月に6連勝、球宴の先発投手を務め、地区優勝を決める“胴上げ投手”にもなった。13勝という数字は、文句なしのエース級の働きだ。野茂がいなければ、ドジャースの優勝はなかっただろう。
「終わったばかりなんで、感想としては悔しいです。でも、今年はメジャーに上がって、やろうと思って、そこでプレーできた。幸せです」
野茂が、最後の会見に臨んでいる時、思わぬ来客が現れた。