近鉄を過ぎ去ったトルネードBACK NUMBER
8回までノーノーでも交代指示、16四球で191球完投…野茂英雄「日本最後のシーズン」とは何だったのか「鈴木監督はそれでも期待を寄せていた」
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byKoji Asakura
posted2024/05/02 11:03
日本でのラストシーズンとなった1994年、西武との開幕戦に登板した近鉄・野茂英雄。この日、8回までノーヒットの投球を見せていたが…
ノートに記された野茂の「最後の一言」
「ああいう投球だとねえ……。ちょっと出せない。野茂も恥ずかしいだろう。状態がいい、いいで、これだからね。段階をもう一度、踏まないとダメかも……」
エースのふがいない投球に対する鈴木の苛立ちが、ストレートに伝わってくる。
私の取材ノートの左ページにある鈴木の談話に続いて、その真横の右ページに野茂のコメントが記されていた。
「時間をかけて(右肩を)じっくり治す。来年も優勝争いをしているかもしれない。メド? 分からない。また(今季中に)上に上がってくるかもしれません」
その“最後の一行”に、はっと驚かされた。
野茂は、こんなことを言ってたのか……。今、振り返ってみれば、何とも意味深に映る。
「それまで、サヨナラです」――。
<つづく>