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甲子園の風BACK NUMBER
スマホNGの寮生活も「俺は明徳義塾に行く」最愛のひとり息子が“15歳で越境入学”…母の本音「強がりとかではなくて」「入寮後、1本の電話」
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph by母・真奈美さん提供
posted2024/04/27 11:03
小学校時代の竹下徠空。現在は明徳義塾の3年生
「確実に決まった帰省は年末年始だけ。加えて、甲子園に出た年は、ベンチ入りできなかった選手は帰省できるんです。一旦、それぞれの地元に帰って、そこから甲子園の応援に向かいます。勝ったらまた地元に戻って、もう一度甲子園に向かう。現地集合、現地解散なんですね。1年の夏にチームが甲子園に出て、徠空はベンチ入りできなかったので、入寮後初めて大田に帰ってきました。やっぱり、成長は感じますね。昔は『やってもらえて当たり前』の気持ちが透けていたんですが、それがなくなったり。態度に感謝の気持ちが表れてるというか」
謝る息子にゲキ「後悔するぐらいの努力?」
甲子園出場に関しては“あと一歩”の状況が続いている。徠空は1年秋から明徳義塾の4番を任されているが、1年秋は四国大会準々決勝で敗れてセンバツを逃し、昨夏は高知大会の準決勝で敗退。甲子園に手が届きそうで届いていない。昨夏の敗退後、徠空から真奈美さんに電話があった。
「ごめん」
足りない物をお願いするいつもの電話ではなく、自身が勝負所で凡退し、甲子園出場を逃したことへの謝罪だった。「入学以来、一度も弱音を吐くことがなかった」という徠空に、真奈美さんが一喝する。
「ごめんって謝るってことは、これまで自分がやってきたことに後悔があるからでしょって思ったんです。やり切れたら、『自分は今できることを一生懸命やったけど、ダメだった』って言うはずなので。謝るぐらい、後悔するぐらいの努力しかしなかったのって。甲子園に行ってほしい気持ちはあります。でもそれ以上に、涙で終わるんじゃなくて、笑顔で『やり切ったわ』って言える日々を過ごしてほしいんです」
寮入りから丸2年。寂しく思う瞬間もあるが、息子のため、そして子離れをする自分のための時間でもある。
「共同生活を味わって揉まれてきてほしかった」という真奈美さんと同様の理由で、子を全寮制に預けたい親も少なくないのだ。
では、預かる側の明徳義塾には、寮生活でどのようなルールがあるのだろうか。あの独特のだみ声で知られる名将、馬淵史郎監督に恐る恐る取材を打診してみた――。
〈つづく〉