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甲子園の風BACK NUMBER
スマホNGの寮生活も「俺は明徳義塾に行く」最愛のひとり息子が“15歳で越境入学”…母の本音「強がりとかではなくて」「入寮後、1本の電話」
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph by母・真奈美さん提供
posted2024/04/27 11:03
小学校時代の竹下徠空。現在は明徳義塾の3年生
「強がりとかではなくて、抵抗はなかったですね。さすがに、高知まで行くとは思ってなかったですが、高校で寮生活を経験してほしいと思っていたので。やっぱり一人っ子なので自由じゃないですか。共同生活を味わって、揉まれてきてほしいなと。親子の距離は離れますけど、私が試合を見に行けばいいし、会いに行けるし、同じ日本だしって」
兄弟がいない分、人一倍、厳しく育ててきた自負はある。1000スイングを日課としていた素振りをやらずに遊びに行こうものなら雷を落としたし、勉強にも目を光らせた。徠空は「国語のテストの点が悪くて、めちゃくちゃ怒られたことがある」と頭をかく。
それでも「私なりに厳しく育てたつもりですけど、やっぱり限界はあった」と述懐する。息子の将来を見据えて寮生活を経験させる。子を思う母として、背中を押した。
入寮直後に「1本の電話」
2022年4月初旬の入学式の前日が、指定された入寮日だった。地元の大田から高知へ、真奈美さんが車で送った。
入寮から数日が経ったころ、真奈美さんの携帯が鳴る。画面の表示は明徳義塾の寮の番号。携帯が所有できない徠空からの電話だった。
「なんだろう?って思って。心配して電話に出たら、『お母さん、オレ以外みんなマットレスを持っとるんだわ』と。寮の布団が少し硬いので、みんな布団の下にマットレスを敷いているみたいで。他の人は『これが必要だよ』とか『持っていくと便利だよ』といった情報を、中学や同郷の先輩から教わるらしいんですけど、知っている先輩はいないし、そもそも島根から明徳に進むのは初めてのことだそうで……。もちろん、すぐに用意して送りましたよ」
以降も、息子から真奈美さんへの連絡は「何かものを送ってほしいときばっかりですよ」とのこと。だが、帰省で久々に顔を合わすたびに、息子の成長を実感する。