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決勝転倒リタイヤも、マルク・マルケスが得意のアメリカズGPで見せた“絶対王者”復活の気配《一時はトップ走行でファン歓喜》
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/04/17 11:03
スプリントでは2位、決勝では先頭を走りながら転倒と、アメリカズGPで復調ぶりをアピールしたマルケス
その後、アコスタと何度かポジションを入れ替えながら、10周目にはトップを走るホルヘ・マルティンをアコスタに続いてパス。11周目には首位に立ったアコスタを抜き、このレースで初めてトップに立つと、ひときわ大きな声援がサーキットに響いた。
しかし、その歓声はほどなく落胆の声に変わった。COTAでもっとも厳しいブレーキングを要求される下り坂からの11コーナーのブレーキングで、マルケスがフロントブレーキをロックさせ転倒してしまったからだ。
この瞬間、ドゥカティ初優勝もCOTA8勝目の期待も消滅。コース上では、クラッチトラブルでスタートに失敗したビニャーレスが追い上げてきて、アコスタとの熱いバトルを繰り広げたが、マルケスのいない優勝争いはアメリカのファンにとって物足りなかったに違いない。
マルケスには珍しい転倒の原因
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マルケスの転倒の原因は熱によるブレーキトラブルだった。フロントブレーキのトラブルとして珍しいことではなく、対策としてライディング中にブレーキレバーを調整する仕組みも備えられているが、マルケスが転倒した11周目の11コーナーでは、フロントブレーキのレバーがハンドルグリップを握る指に当たるまで深くなっていた。そのため最初のブレーキングで止まりきれず、仕方なくブレーキを握り直したらブレーキがロックしてフロントからスリップダウンしたという。マルケスとしては珍しい「握りゴケ」による転倒だった。
「今日はいい走りが出来ていたけど、フロントブレーキのことばかり考えていた。タイヤに関しては、前日のスプリントを終えたときに(リアに)ソフトは厳しいと思っていたし、グリッド上でマーベリックもアコスタもミディアムを選んでいた。自分もミディアムの方がいいのかもと思ったが、他のドゥカティ勢がみんなソフトを選んだので、彼らの経験を信じることにした。今大会、転倒リタイアに終わったことにストレスは感じるけど、でも、そういう状況でもトップに立てたから良かったよ」