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「僕には時間がない」栗山英樹監督が驚いた大谷翔平の発想…外出時の“大谷ルール”は必要なし?「2年目まで翔平は門限を知らなかった」
text by
栗山英樹Hideki Kuriyama
photograph byNanae Suzuki
posted2024/04/20 11:04
日本ハムファイターズ時代の大谷翔平。栗山英樹監督も驚く独自の考え方で練習に取り組んでいたという
大事なことは、もっと先にある。なかなか常人には、理解ができないことかもしれ ません。
おそらく翔平の中には、大リーグでホームラン王になった今のバッティングのイメージや、投球のイメージがすでにあったのだと思います。もしかしたら、今はそれ以上になっているのかもしれませんが。
最近のインタビューでは、「僕には時間がない」という話をしていました。
「自分自身も年を重ねて、野球人生も中盤に差し掛かっている。ここから先、多くの時間があるわけではない。本当に無駄にしないように、悔いの残らないように毎日頑張りたい」
まだ20代で、将来は開けていくはずなのに、これが翔平の感覚なのです。トレーニングを含めて、もっとやりたいことがあるのに時間がないと言っていたのです。
一般的な選手の本能は、「今日の試合で結果を出したい」でしょう。しかし、それを超越して、「今ではない」と言い切って、トレーニングをやり切ってしまう。これが、翔平なのです。
翔平を見ていて、思ったことがありました。ストイックに身体を鍛え、練習し、外出もしないし、遊びにも行かない。しかし、それは彼が生活を律しているのではない、と僕は感じていました。
自分のやりたいことの優先順位の問題です。
「そんなことをやっている時間があるんだったら、これをやってもっとうまくなりたい」
そういうイメージがはっきりしているのだと思うのです。おそらく、ですが。だから、「律している?」と問われたら「え?」となると思います。
みんなで食事をしたり、お酒を飲んだり、女の子と騒いだりする一瞬の楽しさよりも、スタジアムに来ている 万人が「すごい」と驚いたり、喜んでくれるプレーができる。翔平が目指しているのは、それなのです。
「大谷ルール」はいらなかった
入団後、翔平は外出時の「大谷ルール」でも有名になりました。外出は許可制。門限も設ける。二刀流をやるのであれば、どうしても練習で身体に負荷がかかる。翔平の出身校、花巻東高校の佐々木監督も心配されていました。だから、休む時間をしっかり取らせることが、「大谷ルール」のもともとの発想でした。