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スターダムを去るジュリアに中野たむが「呪いをかけてあげる」…“二人だけの世界”の結末はどうなる?「私以上のライバルとか絶対に許さない」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/03/19 17:00
スターダムをこの3月で退団するジュリア。最後の大一番は中野たむとの一騎打ち。アメリカのプロレスビジネスが変貌する中、注目を浴びて世界に飛び出す
「私の最大のライバル。あんたと戦うのには命だって捧げたってかまわないと思っている」(中野)
「今日は楽しかったよ。ただし、お前の顔はもう当分見たくねえ、はこっちのセリフだよ。また、いつかな」(ジュリア)
中野は女王としての防衛ロードを踏み出したが、同年10月の3度目の防衛戦でヒザを負傷し、長期の欠場を強いられ、ベルトも返上した。今年になってやっと復帰した中野は、思いのほか静かだった。それでも中野らしく、因縁のジュリアに狙いを定めた。
「WWEのトリプルHがジュリアを欲しがっている」
「高い山の頂上で絶景を見る」
ジュリアの願いはここから始まる。ジュリアが思い描く「高い山」がアメリカのリングであろうことに異論の余地はない。行き先はWWEが濃厚だ。
ジュリアは多くを語らないが、この3月でのスターダム退団は決定事項だ。ジュリアは4月にはアクションを起こす。そして遅くても年内にはWWEのリングに上がるだろう。筆者はWWEのトリプルHがジュリアを欲しがっているという話を、ずいぶん前から耳にしていた。
「日本人なんです。日本語しかしゃべれなくて、ごめんなさい。こんな顔をしているくせに」
以前そんなことを言っていたジュリアも、本格的に英語のトレーニングを始めているようだ。きっとアメリカでも力強く生きるだろう。これまで、どんな逆境でもジュリアの心は折れなかった。
「今までも『ふざけんな』って強く生きてきた。乗り越えてきた。どんなに批判されても私は挫折するような人間じゃないから」
WWEを追うAEWはメルセデス・モネを獲得し、トニー・カーン社長は「スターダムとのビジネスを進める」と発言したばかりだ。アメリカにおける女子プロレスラーへの待遇はいい方に大きく変わろうとしている。そんな中、ジュリアは世界に飛び出す。WWEがジュリアを獲得するなら面白い構図もできる。
ともあれ、ジュリアと中野の最終戦は迫っている。
何のタイトルもかけられることなく、互いに無冠であるがゆえに、「二人だけの世界」は、逆に想像を超えた試合になるのかもしれない。