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「もっと選手に厳しくしたら」と言われても…“怒らない野球”で強豪撃破《甲子園初出場初勝利》熊本国府・31歳の童顔監督が示す「シン・高校野球」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/19 11:01
春夏通じて初出場となる甲子園で強豪・近江を破った熊本国府高校。その強さの裏には令和の時代らしい指導が
「初めての甲子園のゲームで、全国は簡単に勝たせてくれないのだと教えられました。相手に負けないよう守り勝つしかないなか、こんな舞台で理想的なゲームをしてくれました」
熊本国府にとって春夏通じて初めての甲子園で初勝利。それは、山田の理念が証明された試合でもあった。
日南学園でのコーチから高校野球の指導者人生をスタートさせた山田は、自身の地元である熊本のチームを甲子園に連れていきたいという熱意から、熊本国府に自ら売り込み2019年にコーチとして再就職を果たす。そして、2年後の2021年に監督に就任した。
熊本国府は私立高校ながら野球部は部員全員が熊本出身で、ほとんどが中学時代に軟式野球をプレーしている。まるで公立校のようなチームについて、山田は「特に理由はないです」とあっさりと振舞いながらも、自らの想いを付随させる。
「それまでうちは甲子園に行っていませんでしたし、常連校でやりたいと思っていたとしても僕を信じてくれるのなら、誰にでも来てほしいという感じです」
相手が自分を信じてくれるのなら寄り添う。山田はそんな指導者だ。
「もっと選手に厳しくしたら」と言われるが…?
童顔の青年監督は、周囲からこのような助言をされるのだという。
「選手を怒らないよね」
「もっと選手に厳しくすればいいのに」
山田も時折、「そうかもしれないな」と感じることがあるのだそうだ。しかし、指導者としての根っこが常に自分に訴えかける。
大人と高校生は違うんだ――。
「監督が100%を求めると、選手が苦しくなると思うんです。自分が高校生だったときの気持ちというのは、歳をとるごとにだんだん忘れていくものなんです。その大人が今の高校生に言っても、伝わらないことのほうが多いんじゃないかな、と思っています」