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ロッテ・種市篤暉が乗り越えた侍ジャパン“完全リレー”絶体絶命の重圧「あれは“種市の10ミリ”ですよ」「青森でニュースになったと…」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/18 11:03
侍ジャパンで完全リレーを締めくくったロッテ・種市
ヒヤリとした場面が訪れたのは最終回だ。そのまま続投した9回、先頭打者が放った鋭い打球は右翼線に伸びた。「ああ、これは終わったなあと思った」と種市。
「打球が見えなかった。マウンドからはフェアゾーンかなとも思った。スタンドがざわついていた」
「種市の10ミリですよ」
一瞬、頭が真っ白になった。「お願いだから、きれてくれ」と祈った。アマチュア投手2選手から始まった完全リレー。侍ジャパン史上初の偉業まであと3人に迫っていた夢が自分の手で潰えてしまう。そう一瞬、頭を過った。直後、審判によるファウルのジェスチャーが見えた。思わず、肩から崩れ落ちるようなしぐさと安堵の表情を見せた。
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後日、「あれは種市の10ミリですよ」と笑った。22年サッカーW杯で「三笘の1ミリ」と話題となったワードとかけたほど、際どい当たりだった。ほぼボール1個分の差で地獄から天国になった。
「本当に普段からゴミを拾うなどの心がけをしておいてよかったと思いました」
今だから笑って言える話。一瞬だが、スローモーションのように時間が流れた感覚だったという。
グラブの刺繍に込めた思い
ホッとしたところで気持ちを入れ替え、そこからはギアを上げた。フォークを連発し三者凡退。鋭く落ちる伝家の宝刀に打者のバットは空を切り、偉業は達成された。
「本当に色々な人に喜んでもらいましたし反響もあった。ああいう形で最後を締めて、みんなと握手できたのは本当に良かった。自分の中でも昨年と今年、この2回の代表の試合で投げることができて、プレッシャーと少しは向き合えるようになったかなと思います」
代表戦で完全試合リレーの最後の2イニングを締める重圧は計り知れない。それを支えてくれたのが相棒のグラブだ。地元青森県のシルエットが刺しゅうされている。
「今年からです。代表用のグラブとシーズン中に使うものと、両方に刺しゅうを入れました。いつもウェブの部分に特に何も入れていないんですが、今年は何か入れようと。そこで青森県の形を入れたらどうかなと思いました」