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「アジア杯の話、聞かせてくれないか?」板倉滉27歳にドイツで本音直撃…長年追う記者はなぜ「ビリビリ破れた練習着」に驚いたか
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byTaisei Iwamoto
posted2024/03/07 11:01
トレーニングで声を張り上げる板倉滉(27歳)。不完全燃焼で終えたアジアカップを今、改めて振り返った
ドイツに戻ってからも、イラン戦の後悔は簡単には消えなかった。「こんなに自分自身でゲームを壊すことは今までなかった」と話したほど苦い経験として刻まれ、自身のパフォーマンスを思い出しては自問自答する時間が続いた。
「アジアカップを引きずっているわけではないけど、(イラン戦のことが)ずっと頭の中にある。こっちの試合に出ている時も常に緊張感がある」
それでも、サッカー人生は続いていく。ウジウジ考えて立ち止まっていても意味がない。自分の甘さを痛感したからこそ、これを機に変わらないといけないと板倉は前を向く。
「ここで変わった、と言えるように自分自身もステップアップしないといけないし、それこそワールドカップ予選もすぐに来るわけじゃないですか。終わった瞬間はもちろん申し訳ないと思いましたし、後悔しましたけど、そんな思いを持ち続けながら毎日トレーニングしに行くのも嫌だなと。毎回、来るわけですよ、次の日が。まずメンタル的にも早く切り替えて、もう先に進まないといけないなって。止まっている時間はない。ここから落ちていくのは簡単だと思うんです。それでは駄目だという思いで今はやっています」
その思いは、すでにピッチに反映されている。
「もっとトライしていいんじゃないか」
リーグ復帰戦となったダルムシュタット戦(2月10日)ではスコアレスで迎えた77分、ロングボールに追走して相手のシュートに合わせる形でスライディング。チーム全体が疲弊する苦しい時間帯に体を張ったプレーでピンチを凌ぎ、最終ラインの要として勝ち点1獲得に大きく貢献した。
さらに、興味深いのはトレーニングにも意識の変化が感じられることだ。
これまでは自分より強そうなFWと対峙するときは無理に寄せず、トラップした直後やボールを運ぼうとした瞬間を狙うクレバーな守備を心がけていたが、アジアカップ後はよりフィジカル勝負に重きを置いている。
「相手の強さと良さを消せればいいと思っているから、公式戦では全部が全部いくわけではないんですけど、練習の時は前よりもトライしていいんじゃないかと思っているんです。これから自分がより高いレベルに行って強靭なフィジカルを持った相手と戦うことになったときに、もっとバチバチやれるようにならないといけない。前提としてそこで対等に戦うことができれば、クレバーにいく時とガツッといく時とで臨機応変に対応できるようになるかなって」