準々決勝イラン戦、板倉は低調なパフォーマンスに終始した。ロングボールで競り負け、ボールを持っても前に運べない。前半にイエローカードをもらった影響もあったのか、対人では後手に回るシーンも目立ち、相手の同点弾に絡んだ。後半アディショナルタイムには、冨安健洋との連係ミスからPKを献上。この失点が重くのしかかり、日本は準々決勝で敗退した。

イランにPKを献上した板倉。この日のパフォーマンスを象徴するシーンだった　©︎Kiichi Matsumoto

　敗戦を決定付ける無情なホイッスルが鳴り響くと、板倉は足早にロッカールームへ戻った。全員が集まって行うはずの試合後の円陣に加わらず、サポーターに挨拶する場内一周にも参加しなかった。

「もう、無理でしたね」

　板倉は当時の記憶をたどる。

「ピッチにはいられなかった。悔しい……いや、悔しいじゃないですね。イライラしていました。自分のパフォーマンスに腹が立つというか。あれこそ（PK献上のシーン）が自分の弱さ、甘さじゃないかなと思っています。終わってから後悔しても遅いんですけど」

　競り合いでもビルドアップでも、普段では考えられないようなミスが散見された。絞り出す言葉からは、敗戦の責任を痛感していることがひしひしと伝わってきた。

負傷明け、体調不良…それでも言い訳はできない

　板倉はカタールW杯から引き続き、第二次森保ジャパンでも守備陣を牽引してきた。ただ、今回のアジアカップは負傷から復帰したばかり。年明けに練習試合に参加したとはいえ、試合勘に不安を抱えていた。

　さらに、初戦のベトナム戦からフル出場したが、体調不良もあり第3戦のインドネシア戦はベンチ外になった。実は、一時は体重が数キロ減るほどの事態だったという。決勝トーナメントではコンディションが回復したものの、決して万全な状態で迎えられたわけではなかった。それでも、言い訳になるようなことを語るつもりはない。

「あれがすべてです。あれが板倉滉ってことですよ」

　そう、語気を強めて続ける。

ギリギリのコンディションで戦っていた板倉　©︎Kiichi Matsumoto

「もちろん、もっとできたとか、もっとできると言えるかもしれないけど、今回のようなアジアカップの大事な試合でなかなか自分のパフォーマンスを出すことができていない。勝たないといけない試合でああいうプレーをするということは、今の自分の実力なんだなと認めています」

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