球際の変化を物語るように、板倉のウインドブレーカーはビリビリに破れていた。「これまで対峙した中でもトップクラスにフィジカルが強い」と評するアメリカ代表FWジョーダンに対し、厳しい寄せでぶつかり、掴み合いながら前を向かせない守備を完遂。それほどまでに“挑む”姿勢は新鮮だった。

「自分の中ではもうすでにあのアジアカップがあってよかったなと思い始めているんです。あの大会を経て、全てをレベルアップしないといけないと思いましたけど、体をでかくしたり、スピードを速くしたりは、そんなにすぐ変わるものではない。だから、まずは日々の取り組みから意識を変えていくことで強さを得ていくしかないかなと。今はそういうところで新たな楽しさを感じています」

板倉が着用していたウインドブレーカーには大きな亀裂が入っていた　©︎Taisei Iwamoto

　再び、日本代表のユニフォームを纏える保証はどこにもない。今は、そういう危機感も生まれている。ここで変わらなければ、さらなる上積みもない。

「冨安があれだけやっている中で、オレがもっとできるようになったら個で完結できる場面も増える。（代表チームにとって）そういう強さもやっぱり必要だと思う。簡単にスタメンの座を譲る気はないというか、自分がちゃんと出てチームを勝たせたいという思いが一番強い」

　サッカーキャリア最大の失敗を経て、改めてサッカーへと向き合うきっかけを得た板倉。その言葉が現実となったとき、その先には明るい未来がきっと待っている。