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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
進学校の10番「ダメだったら受験するつもりだった」急転プロ入りを実現したスゴい“予習力”とは? 名将ミシャが“合格”と認めた無印高校生
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/02/19 11:03
北海道コンサドーレ札幌への加入を発表した名古屋高校・原康介(3年)。仲間たちに祝福され、笑みをこぼした ©︎Takahito Ando
「ミシャさんは【3-4-2-1】で、ダブルボランチの2枚のうちの1人がDFラインに落ちてくる。最初見たときは横パスが奪われた時のリスクが大きいやり方なので、『なんでこれをやっているんだろう?』と疑問に思いました。実際にそれで失点をしてしまうこともあるのですが、見続けるうちに『これは繋ぐためではなく、スペースを開けるためにやっているんだ』と気づいたんです」
ミシャサッカーの傾向と狙いを把握すると、「奪われるリスクはあるけど、そこで相手を前に食いつかせることで、裏のスペースが空く。そこに素早く縦パスをつけて、(自分のポジションである)ウィングバックがスピードで突破していく。大きなリスクを背負ってでも攻撃的なサッカーをすることこそが、ミシャさんの考えだと思った」と細かく分析。さらにCKやFKなどのセットプレーの攻撃、守備の仕方までを把握した上でトレーニングに参加。学業で培った “予習力”は見事に生かされた。
「参加初日に『今年のコンセプト』を動画で見せてもらったんです。その時の言葉や映像を見て、自分の予習と一致していたし、僕の特徴を出せるサッカーだと確信できました」
部屋の中では受験生「切り替えてました」
日に日に評価を上げていく一方で、練習後は一人部屋にこもって参考書と向き合う。毎日4時間は勉強時間を確保した。
「部屋の外はコンサドーレであり、夢を掴めるかどうかの千載一遇のチャンスの場所。部屋の中は一人の受験生。ここは勉強する場所だ、と切り替えていました」
どちらか一方の挑戦であっても、プレッシャーに押しつぶされてもおかしくない。しかし、原は「それはなかった」とキッパリ否定する。
「もしコンサドーレに加入できなくても、関西学院大と中央大も落ちたとしても、1年間浪人する覚悟はしていました。もしそうなれば、全ての時間を勉強に振り切って、筑波大学の建築学部か理工学部を受験する。受かったらそこでプロに向けてサッカーを再開する。それでもダメだったらサッカーをやめよう、とまで考えていました。確かに、切羽詰まった状況でしたが、不思議と苦しくなくて、むしろこの状況が面白いなと勝手に思っていました(笑)」