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[時代おくれの男でありたい]闘将が輝いたあの時代 ドゥンガ/チラベルト/ロイ・キーン/カーン
posted2024/02/19 09:00
text by

熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
AFLO / Getty Images
「(負傷した)ネイマールがいなくても、我々はブラジルなんだ。なんとかなるはずだ」
スタジアム近くのバルは、カナリア色のシャツを着たブラジル人で埋め尽くされ、やがて始まる大一番の話題で持ち切りだった。2014年7月8日、ドイツとのワールドカップ準決勝のことである。
強がり交じりの楽観論が幅をきかす中、ひとりが外国人の私にだけ言い聞かせるかのように呟いた。
「ドイツには勝てないよ。ネイマールがいたとしても、きっと負ける」
そして、淡々とこう続けた。
「いまのブラジルには統率力と根性のあるヤツがいない。そう、ドゥンガみたいな」
数時間後、ブラジルは1対7の悲劇に見舞われる。ドゥンガがいたら……。敗退は避けられなかったにせよ、これほど無残に敗れることもなかったのではないか。
吠える闘将、ドゥンガはワールドカップに3度出場し、2度ファイナルを戦った。彼はやかましいだけの男ではない。優勝した'94年アメリカ大会では、スタッフも含めた全員のボーナスを同額にするため協会幹部と交渉し、要求を通した。自ら進んで問題児ロマーリオと同室になり、点取り屋としての能力を引き出した功績も見逃せない。
アメリカで世界を制したドゥンガは翌年、ジュビロ磐田に移籍する。すべてを手に入れた男は、年金リーグと呼ばれた新天地でも怒鳴っていた。勝利への渇望は衰えていなかった。だからこそ、34歳でふたたびセレソンのキャプテンを任されたのだ。
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