Jをめぐる冒険BACK NUMBER
16年ぶりJ1で東京ヴェルディはどう戦うか「外国人も獲れたけど…」「平均24.1歳のメリットを活かすなら…」城福監督と江尻強化部長が明かす戦略
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byTatsu Ikeda
posted2024/02/08 17:02
ヴェルディのエースとして期待される染野唯月。16年ぶりのJ1で緑の旋風を巻き起こすか
プレシーズンのスケジューリングで遅れをとったものの、移籍市場で出遅れたわけではない。
むろん、予算の問題で手を引かざるを得なかったケースは少なくないが、状況に応じてターゲットを即座に切り替えるなど、マーケットにおいて熟練の振る舞いを見せた。
なぜ、スムーズな動きができたのか――。
「夏の段階でJ1に昇格した場合、J2の場合に分けて、選手をリサーチしていましたから」
見木、山見、山田…狙っていた選手を獲得
実際、ジェフユナイテッド千葉の10番だった見木友哉は、競合を制して契約に成功している。おそらくヴェルディよりも好条件で獲得を狙っていたチームもあっただろう。しかし、真っ先にオファーを出したのがヴェルディで、その熱意を理由に見木は移籍を決めたという。江尻強化部長が明かす。
「代理人とも前もってコミュニケーションを取っていて、どういう契約で、どういう状態なのか、情報を得ていました。そのうえで城福監督と『J1に上がれたら(獲りに)行きましょうか』『見木は絶対に力を出せると思うから行こう』と」
FC町田ゼルビアから加入した左サイドバックの翁長聖は、「左利きのサイドバックはマストで欲しい」という指揮官のオーダーに応えて獲得した選手である(右利きだが、両足利き)。当初は別の選手を狙っていたが、所属元に残りそうだと判断するや素早く切り替えて翁長の獲得に成功した。
ガンバ大阪と京都サンガF.C.から、いずれも期限付き移籍で獲得した左ウイングの山見大登と右ウイングの山田楓喜は、昨夏にも狙っていた選手たちだ。
欠場リスクより“五輪に選ばれるため”の熱量を取った
とりわけレフティの山田は、昨夏にセレッソ大阪から期限付き移籍で加入して昇格の立役者となりながら、予算の関係で買い取れなかった中原輝(現サガン鳥栖)に代わる攻撃の核として期待されている。
パリ五輪出場を目指すU-23日本代表の一員でもある山田は、4月に開幕するアジア最終予選と7月に開幕する本大会の期間中、最大でリーグ戦8試合に欠場する可能性があるが、城福監督は「それを承知で獲得しました」と力を込める。
「欠場のリスクより、彼の『オリンピックに選ばれるためにヴェルディで結果を残すんだ』という熱量のほうを取ったんです」
そんな指揮官の意見に、強化部長も同調する。
「オリンピックのメンバーに選ばれれば名誉なことだし、京都からでなくヴェルディから選ばれるということが、我々のフィロソフィにとって大きい。それに『ヴェルディで結果を出せば、そういうところに繋がるんだ』と他の選手たちに思ってもらえたら、我々の今後のリクルーティングにも関わってきますから」
そのフィロソフィとは、育成型クラブを極めること――。