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《独占激白》遠藤航が語るリバプールに移籍できた理由…「実力がある」「実力をつける」を繰り返して<日本代表主将>
posted2024/01/31 11:00
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph by
Getty Images
発売中のNumber1089・1090号掲載の[主将激白]遠藤航「俺からしたら、普通っす」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】
後半40分から出場「あ、出るんだ、みたいな」
前歯の欠けたオヤジが、僕に向かって毛むくじゃらの中指を立てていた。赤いユニフォームを着た日本人を挑発するように、両目を見開いて何かを叫んでいる。その英語は聞き取れないが、ここには書けない言葉に決まっている。そういえば昔はフーリガンと呼ばれた荒くれものたちの国だった。今では洗練されたライトブルーのシャツをまとい、タバコの火はスタンドから消えた。ひとしきり吠えた男も、黒いコートのポケットに手をつっこみ、コッソリと電子タバコを口に咥えた。
2023年11月25日。エティハド・スタジアム。プレミアリーグの首位攻防戦、1位マンチェスター・シティは2位リバプールをホームに迎えた。世界で初めて鉄道で繋がれたその区間。距離は電車で1時間。何故か近くなればなるほどに、敵意とフットボールは燃え上がる。
試合の均衡をやぶったのは、シティの最前線に君臨するノルウェーの神童、アーリング・ハーランドの左足。オランダ代表キャプテン、フィルジル・ファン・ダイクの背中を捉えてターン、一気に流し込む。後半、対するリバプールはイングランド代表トレント・アレクサンダー=アーノルドがするすると前線まで走り込み、強烈なミドルを叩き込んだ。アシストはエジプトの英雄、モハメド・サラー。
ピッチには誰もが知る世界のサッカー界の主役たち、選ばれた22人しかいない。そして後半40分。アルゼンチン代表アレクシス・マクアリステルに代わって投入されたのが、日本のキャプテン、遠藤航だった。
「確かにちょっとはびっくりしました。あ、出るんだ、みたいな。今までの使われ方とはやっぱり違ったんで。監督、信頼してくれてるんだなって。あの強度の試合に途中で入るのは本当にきついんですけどね(笑)」
ハーランドに競り勝つも「普通のことっすよ」
2名の退場者が出たトッテナム戦を除き、この試合まで遠藤は同点、もしくは負けている場面での途中出場はなかった。サッカーではよく言われる「途中出場の方が難しい」世界一の肉弾戦とスピードが常の中、ビッグクラブでは信頼と出番を一瞬で失うこともある。それでも少しずつ、確実に信頼を積み重ねてきた。