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「井上尚弥という存在は脅威でしかなかった」“国内最強”の軽量級オリンピアンが衝撃を受けた、高3のモンスター「本当に怪物だと思うのは…」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byWataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

posted2024/02/01 11:01

「井上尚弥という存在は脅威でしかなかった」“国内最強”の軽量級オリンピアンが衝撃を受けた、高3のモンスター「本当に怪物だと思うのは…」<Number Web> photograph by Wataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

高校時代の井上尚弥。高校生で初のアマ7冠を成し遂げた怪物と拳を交えた9歳上のロンドン五輪代表・須佐勝明は「この選手は何なんだ」という衝撃を受けた

「ネリもいきなり打ち合うと、倒されるのは分かっているはずです。ガードをしっかり固めて、後ろに下がって戦えば、尚弥君でも後半のラウンドにならないと倒すのは難しいです。一昨年12月のポール・バトラー(イギリス)戦、昨年12月のマーロン・タパレス(フィリピン)戦はそうでしたよね。ネリ側は打たせて疲れさせたいところでしょうが、ガードの上からでもあのパンチをもらえば、ダメージが蓄積して後半にKOされるのかなと。きっと、ネリは中に入りたくても、尚弥君の距離には入れないと思いますよ」

階級の壁は、むしろ「新たな井上尚弥が見えるかも」

 はたして、モンスターが「階級の壁」にぶつかる日はくるのか――。スーパーバンタム級では、その気配はない。井上本人はタパレス戦後、2025年までは同階級にとどまることを口にしているが、転級への興味は尽きない。一般的にウエイトが重くなれば、パワーの差が出てくると言われる。それを踏まえた上で、須佐は1階級上のフェザー級でも問題なく対応できると見ている。ただし、リスクは高まるという。仮に「壁」になる可能性があるとすれば、身長差。165cmの井上に対し、フェザー級のボクサーたちは170cm超が当たり前になる。

「リーチ差のある選手とどのように戦うのか。今までの尚弥君の距離で対応できなくなってくる可能性も出てきます。遠距離からのパンチをかいくぐり、中に入っていく場面も増えるのかなって。尚弥君が前に出て、接近戦を選択する状況が多く生まれれば、そこでまた進化するはず。そのとき、新たな井上尚弥が見えるかもしれません。楽しみですよね」

 小よく大を制す戦いにはロマンがある。1980年代後半にヘビー級の世界戦線を席巻した伝説のチャンピオン、マイク・タイソンを例に出し、須佐は期待に胸を膨らませていた。

自分も違う場所で負けないようにしよう

 今では子ども3人の父となり、今年9月には40歳を迎える。その目にスポットライトを浴びる後輩はどう映っているのか。

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