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「井上尚弥という存在は脅威でしかなかった」“国内最強”の軽量級オリンピアンが衝撃を受けた、高3のモンスター「本当に怪物だと思うのは…」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byWataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

posted2024/02/01 11:01

「井上尚弥という存在は脅威でしかなかった」“国内最強”の軽量級オリンピアンが衝撃を受けた、高3のモンスター「本当に怪物だと思うのは…」<Number Web> photograph by Wataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

高校時代の井上尚弥。高校生で初のアマ7冠を成し遂げた怪物と拳を交えた9歳上のロンドン五輪代表・須佐勝明は「この選手は何なんだ」という衝撃を受けた

「プロ仕様になっている部分はもちろんありますが、根本的な戦い方は同じだと思います。アマチュアボクシングの『打たせず打つ』をそのままプロに持って行っている。僕が『怪物』だと思う理由はそこ。プロで26戦していますが、相手にポイントを取られたラウンド数はそれほど多くないはずです。なにせ、打たせていませんから。これは本当にすごいこと。ほとんどの選手はアマから転向するときにスタイルを変えるのですが、尚弥君は違います」

パンチの命中率は、ずば抜けています

 須佐が舌を巻くポイントは、昔も今も変わらない。距離の取り方と左ジャブの精度だ。

「遠い距離からでも狙った的を外さないんです。パンチの命中率は、ずば抜けています。映画『アメリカン・スナイパー』に出てくる狙撃の名手のようなイメージ。今の試合を見てもらえれば、分かると思いますが、ほとんど空振りはしていませんよね。遠距離からでも常に狙っているので、相手はやすやすと懐に入れないんです。怖いですよ。遠心力が効いた右の強烈なパンチまで飛んできますし。それこそ、金属バットみたいなヤツが」

アマチュア時代には“隠れていた”井上の真価

 井上の成長ぶりは、須佐の想像をはるかに超えていた。ライトフライ級から始まりスーパーフライ級、バンタム級、スーパーバンタム級と世界4階級制覇を成し遂げ、KO率は88%。戦績は26戦全勝の23KO。あらためて、山のように積み重ねたKO勝利の数に目を細める。

「世界戦でここまでバチバチ倒すようになるとは正直、思わなかったです。アマチュアのグローブは10オンス(プロは8オンス)で高校生まではヘッドギアをしていますし、相手を倒すのはなかなか難しかった。僕は思い切り打ち込むパンチをあまり見ていなかったので、これほどまでのポテンシャルを持っていたのかって」

ネリ戦はどうなる?

 アマ戦績は81戦75勝6敗。ストップ勝ちのRSCは「48」。細かった体も階級を上げるごとにたくましくなり、30歳を迎えたいまなお進化を続けている。八重樫東トレーナー、鈴木康弘トレーナーがフィジカルトレーニングを担当するようになり、さらにパワーアップした印象を須佐は受けていた。それに伴い、対戦相手がより慎重に戦う傾向にあることも指摘。次の防衛戦で有力な対戦候補として名前が挙がる、WBC同級1位のルイス・ネリ(メキシコ)との試合も似たような展開を予想する。

【次ページ】 階級の壁は、むしろ「新たな井上尚弥が見えるかも」

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