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敗戦後の伊藤美誠(23歳)は涙が止まらなかった…心身ともに苦しんだ選考過程、明かした葛藤「金メダリストが“五輪シングルスに落選するまで”」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2024/01/29 17:02
1月26日、全日本選手権6回戦で敗れ、記者会見で涙を流した伊藤美誠
同世代をリードし、主軸として戦い続けた足跡
2014年3月、中学1年生で出場したワールドツアー・ドイツオープンでは平野と組んだ女子ダブルスでワールドツアー初優勝。それはダブルスでの史上最年少優勝記録でもあった。
中学2年生の2015年3月にはドイツオープン女子シングルスで優勝。これも史上最年少での優勝であった。
2016年のリオデジャネイロ五輪には団体戦代表として出場、3位決定戦のシングルスで勝利し銅メダルを日本にもたらした。
中国勢にも最も警戒される選手にまでなった伊藤は、リオの5年後、東京五輪に出場を果たした。描いた目標にたどり着くため努力を重ね、一つ一つ形を残してきた。
福原愛、石川佳純らの背中を追い、早田、平野ら同世代と切磋琢磨しながら成長を遂げ、同世代をリードし休むことなく日本の主軸として戦い続けた。その足跡に伊藤の真骨頂がある。
気になる今後については…
シングルスの代表は手にすることができなかった。団体戦代表に選ばれる可能性はあるが、伊藤は言う。
「私はずっとシングルスで優勝することを目標にしていて、(パリ五輪の)団体戦に選出されても出るかどうかはっきり決まっていないです。まずは落ち着いて、どこまでやるかをしっかり考えたいです。昔からの目標はよいところでやめたいでしたが、これで終わりたくない気持ちもすごくあるんですけど、終わりたい気持ちもあります。よいところで終わりたいので、もう少し頑張ります」
今はこれからを明確に描くことはできない。
ただ、積み重ねてきた足跡が変わることはない。パリ五輪のシングルス代表をつかんだ平野は伊藤についてこう語っている。
「どんな結果でもすばらしい選手に変わりはないと思うので。すごい尊敬できる選手だし、すごい選手だとみんな思っています」