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「前十字靭帯が50%も断裂している…」30歳で重傷を負ったJリーガーが下した「大事な膝にメスを入れない」という決断…なぜ、完治できたのか?
posted2024/01/26 11:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
前十字靭帯損傷がサッカー選手にとっての致命傷だったのは、数十年前の話。スポーツ医療が発達し、近年はその大怪我からの復活も珍しいことではない。
しかし、北海道コンサドーレ札幌に所属する31歳のMF駒井善成の復活劇は、実にレアなケースだ。さらに言えば、スポーツ界において決して小さくない意味を持つものだろう。
関節内に位置する前十字靭帯は血流に乏しいため、基本的には自然治癒が望めない――そんな常識に反して、50%を損傷しながら手術をしない保存療法によって完治させたのである。
「20~30%の部分断裂なら手術しないでもいけるんですけど、50%も断裂して保存療法で治ったのは、少なくともサッカー界では僕が初めてだと思います。春に公式戦に復帰してからシーズン終了までリバウンドもなかったし、痛みや違和感もなかった。トレーナーが画像を見ても『損傷したとは思えないほど完治している』と言ってもらえたので」
「走った瞬間に膝がガクンと抜けて…」
駒井がアクシデントに見舞われたのは、2022年10月のアビスパ福岡戦のことだった。
相手のクロスを阻もうとして伸ばした左足が相手の振り足と接触し、伸び切った状態の膝に自身の体重が乗ってしまったのだ。
「でも、違和感はあったんですけど、痛みは全然なかったんですよね。ドクターに触診してもらっても、大丈夫そうだと。それでピッチに戻ったら、走った瞬間に膝がガクンと抜けて。これはマズいかな、と思って途中交代したんです」
もっとも、出血による腫れもなく、痛みもなかったから、この時点では自身が大怪我を負ったとは思っていなかった。
ところが病院でMRI検査を受けると、前十字靭帯を50%損傷していることが判明する。