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「箱根駅伝を優勝しない方が幸せだった」郡司陽大26歳が苦しんだ「箱根駅伝の魔力」 自傷行為、引きこもり生活…救いとなったのは「加藤純一」だった 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byWataru Sato

posted2024/01/21 06:02

「箱根駅伝を優勝しない方が幸せだった」郡司陽大26歳が苦しんだ「箱根駅伝の魔力」 自傷行為、引きこもり生活…救いとなったのは「加藤純一」だった<Number Web> photograph by Wataru Sato

時折目に涙を浮かべながらつらい時期のことも赤裸々に明かしてくれた郡司。加藤純一などゲーム配信者に救われて今があると語る

箱根には魔力みたいなのがある

 箱根に優勝すれば、翌朝から日本テレビの番組に出演し、いろんな人から「おめでとう」と声をかけられるようになる。一般の学生ならついつい舞い上がってしまうのは当然だ。でも、それは箱根で活躍し、優勝したからであって、特に個人に対して興味があるわけではない。2、3週間もすれば熱が冷め、熱狂的な取り巻きは消えていく。箱根であれだけ注目を集めた郡司だが、うつ病に苦しんだ経験をブログに書いても3人からしかレスポンスがなかった。

「棘のある言い方かもしれないですけど、いろんな人が応援してくれているのは、箱根に出ている君だよっていうことなんです。箱根駅伝という存在の大きさが自分とイコールじゃないことは分かっているんですけど、そう思ってしまうんですよ。その魔力みたいなのが箱根にはあって、あの時の自分と今の自分を比べられて、僕は何も変わらないのにダメだって言われる。それが本当にきつくて、苦しくて、さらに落ち込むんです」

「おもしろいなぁ」部屋に籠もった郡司を救ったのは…

 ひとりで部屋に閉じ籠っている時、救いになったのがゲーム配信や雑談配信だった。郡司は、「おもしろいなぁ」と思いながら聞いていた。

「流れていく時間とゲーム配信や雑談配信が、自分を少し前向きにさせてくれました。僕は、加藤純一さんや恭一郎さんの雑談配信が好きで、よく聞いていました」

 暇つぶしにゲーム配信をしていると、「ところで、おまえ、誰?」と聞かれた。「俺、こんなんだよ」と箱根の時の写真を見せると「おまえ、スゲーな」と言われた。「でも、今は走れないけどね」など、普通に会話が続いていくことに楽しさを感じた。

「そういう、たわいもない会話をすることで僕は救われたんです」

声をかけてくれる人がいるのは、本当に幸せ

 外の世界とも少しずつつながりを持てるようになった。東海大の両角監督から「自分の強みを見つける」というテーマで話してほしいと言われ、短い時間ながら経験談を話す機会をもらった。あるイベントでゲストランナーとして呼ばれ、「箱根を覚えているよ」と、声をかけてもらった。社会に一歩ずつ踏み出していく中で、うつの症状も改善していった。病院にいく回数が減り、抗うつ薬を飲む回数が減った。

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