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箱根駅伝優勝→実業団1年半で引退…東海大の優勝アンカーが明かす“箱根後の苦悩”「過去の自分と比較されるのは本当につらかった」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byWataru Sato
posted2024/01/21 06:01
2019年、東海大の箱根駅伝初優勝のゴールテープを切った郡司陽大。現在は競技から身を退いた本人が明かす引退の決断まで――。
「小松は、アイドル好きで握手会とかに行っていて、そういうところは全然合わないんですが、考え方がおもしろくて。何かをみんなでやるって言っても『俺いいわー』って感じだし、みんなで授業受けるかって言っても面倒だからいいやってタイプ。僕はチームでいる以上、ある程度足並みを揃えてやっていくことが大事だと思っていたんですけど、小松と話をしているうちに、みんながこうだからこうしなきゃいけないというのは考えなくてもいいんだ。人は人、自分は自分と考えることができるようになったんです」
陰口を言われた小松は「知っていたよ」
小松の人としての器の大きさも郡司にとって尊敬するポイントだった。
「3年の時は、小松と箱根を争って、どっちが走るか、みたいになったんです。僕は努力して調子を上げているけど、小松はサボって適当に上げているんだから走るのは自分だろって陰で言っていたんです。箱根が終わったあと、ふたりでご飯を食べにいったんですけど、『お前がそういうことを言っていたの知っていたよ。そういうバチバチがないとチームって勝てないから』って言われて。『こいつ、人としてもできるし、負けたな。これからこいつと一緒に頑張って行きたいな』と思いました」
4年時、黄金世代のなかでも郡司と小松は、取材などでツーショットで撮られることが増え、存在感を示していた。
ようやく自分も世間的に認められてきたのかな
「強い世代のなかで、ようやく自分も世間的に認められてきたのかなと思いました」
大学4年の箱根駅伝で東海大は、優勝候補に挙げられていたが、往路は4位に終わった。首位の青学との差は3分22秒もあり、逆転は厳しくなった。復路で6区の館澤が区間新の走りで差を詰め、小松も区間賞の走りで青学に迫った。だが、3分の差は縮まらなかった。郡司は、大会前に調子を崩して10区に置かれ、2位で青学大を追った。
「スタートは良かったんですが、8kmぐらいで右足が痛くなって……。ペースを落として、また上げての繰り返しでした。それでも前を追わないといけないので、痛みはゴールまで忘れようと思って走ったんですが、苦しい走りになってしまいました」
アンカーがお前でよかったよ
トップの青学大からは3分02秒遅れてゴールし、東海大は2連覇を逃した。ゴールした郡司は「ごめん」と言いながら両手をあわせた。
