背景の一つに、パンデミックの影響があるだろう。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて移動が制限され始めた2020年は、現在の高校3年生がちょうど中学3年生だった頃。つまり、高校進学時のセレクションに大きな影響を与えていた。高校側にしても、例年以上に県外の選手をチェックする機会は減っていたため、実力を測ることができた県内選手の比率が増えた。

　だが、青森山田が築いてきた実績が、地元・青森の子どもたちの視野を上げてきたことを忘れてはならない。

　今大会、準決勝の市立船橋戦でPKを2本止めた守護神・鈴木は、青森市出身で地元の強豪である青森FC U-12から青森山田中学の門を叩いた。

「青森山田の存在は物心ついた時からテレビで観ていましたし、県内では知らない人がいないほど知名度は高い。（サッカー部の）人気もあるし、僕たちにとってずっと憧れの存在でした」

　憧れを叶えるために青森山田中のセレクションを受験。見事、突破した鈴木はそこでレベルの高さを痛感する。

「この厳しい環境でどんどん成長していかないと、高校でスタメンを勝ち取ることは難しいと思いました」

青森山田中学からの進学者の一人であるGK鈴木将永。コロナ禍の影響を多いの受けた世代で、全国中学校サッカー大会では中止を経験していた。卒業後は東海大へ進学予定　©︎Takahito Ando

　中学時代は常に高校での3年間を見据えて練習に励んだ。全国トップレベルの高校生たちに近くで触れることができる環境も成長を大きく後押ししたと振り返る。

初優勝時は小学生「黒田監督の講演会で…」

　身長190cmの高さを誇り、キャプテン山本と共に強固な最終ラインを築いた小泉は八戸市出身だ。青森山田中のセレクションを受験したが、不合格だったことから地元のクラブチームに進んだ経緯がある。

「小学生時代に青森山田が選手権初優勝して、それをテレビで興奮しながら観ていました。選手権の後に黒田監督（当時）が僕の地元に講演会に来て、そこで話を聞いてからより行きたいと思った。でも、中学から青森山田に行かないと高校でレギュラーを取れないだろうなとも……」

　小泉がプレーしたウインズFC U-15も県内では名が通っていたが、青森山田中と対戦する度に「0-5、0-6……いや、それ以上の差で負けることもあった」と、3年間、一度も勝つことができなかった。それが小泉を刺激する。

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