「その通りです。例えば豊島（将之）九段が中村太地八段と戦った順位戦A級では、豊島さんがほぼ持ち時間を使わないまま昼食休憩に入っています。そのほかにも永瀬（拓矢）九段の対局が超高速で進んでいくのは、もうファンの方々にもおなじみかもしれませんね」

豊島、永瀬の対局が“超高速”で進むのは将棋ファンもよく見る光景だろう（代表撮影／2020年撮影） ©JIJI PRESS

――その潮流に対する別のアプローチはあるのでしょうか。

「芝コースの馬場に水をまくような策を考えるしかないです（笑）。冗談はともかく……〈現代将棋の序盤、いわば高速馬場に対応できるような序盤力を磨くこと〉、もしくはそれこそ山崎隆之先生のような難しい力戦の形にするなど、本当の独自性を持たないといけない。自分は終盤に勝負を懸けるタイプです。それでもある程度、序盤について準備をしなければ厳しいと感じるのは事実です」

渡辺明先生から凄く興味深い話を聞いたんです

――確かにタイトル戦でも「2日制なのに、1日で終わってしまうのでは？」と思うほど手が速く進んでいくケースがあります。

「それについて、渡辺明先生から凄く興味深い話を聞いたんです。それは〈これ以上1日目が速く進んでいくと、2日制という形式は今後どうなっていくのだろう〉というものでした。長年、2日制のタイトル戦を戦い続けてきた渡辺先生がおっしゃるからこそ、ものすごく重みを感じるものでした」

名人戦第5局の渡辺　©Keiji Ishikawa

――渡辺九段の話題が出てきたところで、お伺いしたいことがあるのですが。

「渡辺先生がNumberのインタビューでも触れられていた、名人戦第5局後のことですかね？」

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　高見がこう話すのは長野県高山村で開催された名人戦第5局――藤井が20歳10カ月にして最年少名人となった一局後のこと。渡辺はインタビューで戸辺誠七段、そして高見らと夜を過ごしたとの言葉を残している。視点を反転して……高見から見た渡辺の様子は、どのようなものだったのだろうか。

＜第4回につづく＞