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「(内容は)ちょっと言えへんけど…」坂本花織を変えた“コーチとの大喧嘩”…全日本選手権3連覇の裏で日本のエースが泣いていた理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/28 17:04
重圧を抱えながら己に打ち克ち、全日本選手権を勝ち切った坂本花織
坂本花織の“勝者のメンタリティー”
中野コーチとの対話をきっかけに、「ぼーっとしたり、今日は友達が見に来てくれたので友達といっぱい喋ったり、トレーナーさんと一緒にお散歩したり、喋って発散して気持ちに切り替えることができました」と坂本は自ら立て直し、フリーでのミス1つない演技へとつなげ、3連覇を成し遂げた。
よくよく考えれば、傍から他の選手との力関係をどう見られようと、3連覇を期して重圧を感じないことは難しい。
そのうえで中野コーチが言うように、よりよい演技を、と希求する心がある。体調が万全ではない、練習も100%できていない中では、より重圧を感じただろう。
それでも打ち克った。課題としていたトリプルルッツは精度高く、動作やしぐさなど細部もより磨かれ、表現として昇華していた。培ってきたスケーターとしての土台があり、そしてキャリアを糧としてきた。トップを走り続けるために必要なメンタリティーを問われての答えもその1つだろう。
「演技は完璧を求め続けるんですけど、やっぱりたまには『まあいいか』というのも必要かな、というのがあって。あんまり自分に厳しくしすぎないようにしていて、例えばなかなかノーミスができなくて、急にノーミスができるようになったら、『自分すごい』みたいな感じで自分自身をほめて伸ばすという感じで、今シーズンはずっとやってきています」
56年ぶりの快挙に向けて
全日本優勝で来年3月の世界選手権代表に決まった。優勝すれば、56年ぶりの大会3連覇となる。
「世界選手権3連覇は今シーズンずっと掲げてきた目標で、どうしても達成したいです」
ミスのなかったフリーではスピンでレベルのとりこぼしがあるなど、まだのびしろがある。
スケーターそれぞれにスタイルがある中、自身のスタイルを信じて貫き、誠実に磨きをかけてきた。なおその意欲を失わない。
重圧を何度も跳ね返してきた精神力と強さとともに、快挙へ挑む。