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「ひたすら悔しくて…」フィギュア全日本選手権銀メダルの鍵山優真20歳が明かした“世界一”への欲望「今のままだと世界のトップに立てない」
posted2023/12/30 17:03
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
全日本選手権(12月21-24日、長野)の男子ショート。鍵山優真(20)の演技は、“世界一”と称される4回転サルコウから始まった。そのクオリティの高さは折り紙付きで、NHK杯のフリーでは4人のジャッジから出来栄え(GOE)で最高の「+5」を獲得した美技。抜群の飛距離と流れを誇るジャンプである。
ところが、まさかの転倒。残る「4回転+3回転」とトリプルアクセルはきっちりと決めたものの、演技を終えると、ため息をつきながら首を横にかしげた。
リンクサイドでは、今季からコーチについたカロリーナ・コストナーが微笑んでいる。よろよろとリンクから上がると、優しく背中をなでられた。
ショートの演技後「ひたすら悔しくて」
得点は93.94点での3位発進。コストナーが小さく手をたたき、父の正和コーチは鍵山と目を合わせ、“仕方ない”といった様子で苦笑いを見せた。納得いく得点ではないものの、『世界選手権の3枚の切符をかけた全日本選手権』という位置づけからすると、順位そのものはフリーにつながった、と判断した様子だった。
インタビューに現れた鍵山は、まだ現実を消化しきれていないといった表情で語る。
「ひたすら悔しくて」
少し落ち着いてくると、ミスの原因を探った。
「6分間練習の時から、全日本選手権特有の雰囲気や緊張感を感じていました。6分間練習が終わって、自分の準備をしているうちに『ああ始まるんだ~』と思って、気づいたらスタートのポーズに立っていて、気づいたら4回転サルコウを失敗していました。余計なことを考えていたとかは全然なかったんですけど……」
独特の緊張感が、思考を停止させていた、といった状況だろうか。
「やはり全日本選手権は、GPシリーズとはまた違う雰囲気があります。言葉では表しにくいのですが、全員が知ってる人で、日本一を争う場で、みんなが調子を上げてここに臨んでいる。僕も気持ちを高めていました」
「一番のライバルは自分なので…」
確かに、宇野昌磨も今回「僕はオリンピックも含めてどんな大会も経験してきましたが、一番緊張するのが全日本」と語っている通り、その緊張感は特有なのだろう。しかも鍵山にとっては、今季のNHK杯で宇野を抑えて優勝し、 “日本一”に手が届きそうな状況で迎える期待と重圧もあった。