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「(内容は)ちょっと言えへんけど…」坂本花織を変えた“コーチとの大喧嘩”…全日本選手権3連覇の裏で日本のエースが泣いていた理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/28 17:04
重圧を抱えながら己に打ち克ち、全日本選手権を勝ち切った坂本花織
コーチ「(大差の1位で)楽なんじゃないかなと思うんですけど」
昨年の大会でも、当時中学2年生の島田麻央が3位に入るなど、ジュニアの世代の台頭があった。今年もトリプルアクセルと4回転トウループの大技をフリーに組み込んだ島田が3位、中学1年生の上薗恋奈が4位になり脚光を浴びた。
坂本は若い世代の活躍に触れ、こう話している。
「自分自身、(ジュニアのときは)シニアの選手に1つでも勝ちたいという気持ちがあって、全日本で何としてでも結果を残したいというジュニアの気持ちがすごく分かるので、それを上がって来させまいいと頑張って、自分も頑張ってやらないとなというのはありました」
ただ、順位のことを考えるなら、ショートで大きなリードを奪っている中、プレッシャーをそこまで感じる必要はないのでは、という疑問が生じるのも不思議はない。中野コーチも「(大差の1位で)楽なんじゃないかなと思うんですけど」「重圧を感じるほうがおかしいんじゃないかと思いました」と語り、そして続けた。
「自分ができるかどうかで自分にプレッシャーをかけちゃうので」
順位がどうこうよりも、自分がいかによりいい演技ができるかどうか。そこに重きを置いているからこそ生じたプレッシャーだった。
中野コーチとの大喧嘩「(内容は)ちょっと言えへんけど…」
しかし坂本はそんな公式練習から立て直した。理由の1つは、中野コーチとやり合ったことにあった。
中野コーチは言う。
「『花織らしくない』と注意して、それからバトルしていました。何を言ったか覚えてないですけど」
坂本はこう振り返った。
「(内容は)ちょっと言えへんけど、自分的には『今言わなくていいのに』っていう内容が来たから『それ言わなくていいんじゃないの』って言ったらめっちゃ怒られて負けました」
笑顔で、楽しそうに語った。
再び中野コーチが話す。
「いつもそうなったときは注意して、彼女は怒ったりするんですけど、落ち着いたら普通にできるというのがルーティンなので」
思いをそのまま吐き出しぶつけることができて、それを受け止めることができる。2人の培ってきた関係を思わせた。