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大谷翔平に山本由伸を奪われた?「ヤンキースは自信を持っていた」“3億ドル”でもドジャースに敵わなかった争奪戦…佐々木朗希らへの影響も
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/12/26 06:05
世界一を決め、大谷翔平とハグして喜びを分かち合う山本由伸。来季は再び同じユニフォームに袖を通すことになった
「さすがのドジャースでも大谷、山本の両取りはあり得ないと思う。いくらなんでもそれだけの額は支払えないよ」
今年は12月7日までテネシー州メンフィスで行われたウィンターミーティング中、ドジャースを長く取材するベテラン番記者はそう断言していた。確かに本来であれば、大谷と7億ドル契約を締結した時点でドジャースは“山本争奪戦から消えた”と判断されるのが通常の考え方のはずだ。
ところが――ドジャースは大谷、山本の2人に10億ドルというとてつもない投資をすることになる。こんな“あり得ない”補強が可能になった背景として、やはり大谷の異例の“後払い契約”によるアシストが効果を発揮したに違いない。
大谷はプロスポーツ史上最高の総額を受け取るが、盛んに報道されている通り、そのうちの97%は後払いである。向こう10年間の年俸は200万ドル。贅沢税の基準となる総年俸計算は4600万ドルに過ぎず、ドジャースのような金満チームが敬遠する金額ではなくなった。おかげで山本、一足先に獲得&契約延長されたタイラー・グラスノーといった他のビッグネームと契約することも可能になったのだろう。
それに加え、大谷は12日、ドジャースと山本の面会にもフレディ・フリーマン、ウィル・スミスらとともに出席した。ムーキー・ベッツが所用で欠席したこの会合では、大谷の存在が大きな意味を持ち、フロントに「ぜひ山本も獲得してほしい」と進言していたとか。“他の日本人選手と一緒のプレーを好まない”という見方もあった世界最高のプレーヤーが自ら勧誘に乗り出したことは、山本の心にも熱く響いたはずだ。
佐々木朗希らの争奪戦にも影響?
こうして様々な糸が絡み合った今オフの補強戦線は、もともと大本命と目されたドジャースの圧勝に終わった。長年の“恋人”だった大谷を獲得すると、その成功ゆえに山本争奪戦にも余裕を持って臨むことができたという構図が見えてくる。一方、「山本のドジャースとの契約はロサンゼルスのニューヨークへの最新の勝利になった」といったニューヨークポスト紙の見出しには、“惨敗”に終わったヤンキース、メッツとそのファンの無念が象徴されているようでもあった。
ここでLAの名門チームがNo.1、No.2ターゲットを首尾よく手に入れたことは、未来にも関連してくるのかもしれない。同じくドジャースがマークしている佐々木朗希をはじめ、後に続く日本人選手の動向にも大きく影響することになるのではないか。