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名門ジムから31歳で《プロボクサー転身》…“五輪延期で引退決断”の陸上元日本代表のナゼ「陸上競技の晩年より、今が楽しい」意外なワケは? 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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photograph byL)AFLO、R)Shigeki Yamamoto

posted2023/12/26 11:02

名門ジムから31歳で《プロボクサー転身》…“五輪延期で引退決断”の陸上元日本代表のナゼ「陸上競技の晩年より、今が楽しい」意外なワケは?<Number Web> photograph by L)AFLO、R)Shigeki Yamamoto

2018年のアジア大会では4×400mリレーなどで日本代表に選ばれた木村淳さん。現在は大阪帝拳ジム所属のプロボクサーだ

 大学入学後は表彰台から離れていた木村だが、ロングスプリントに磨きをかけると、大学4年時にその年の学生ランキングトップの46秒00をマーク。日本インカレで2位、国体で3位と輝きを取り戻した。だが、本人は「正直に言うと、別に好きな種目ではなかった」と笑って振り返る。

「競技を離れたからこそなおさら分かるんですけれど、僕はとにかく『勝つこと』にこだわっていたんですよね。種目にこだわるのも大事だと思うけれど、種目を変えてでも、自分が輝ける場所にいきたいという気持ちが強かったんです」

2018年のアジア大会で念願の「日本代表デビュー」

 卒業後は大阪ガスに所属。最初の2年間はスランプに陥り、記録は下降線を描いていた。だが、徐々に復活の糸口をつかみ、社会人4年目に46秒42をマーク。そして翌2018年、春先から自己記録に迫る46秒08を出し、日本選手権で2位入賞。その夏のアジア大会代表に選出され、4×400mリレーの男子予選、男女混合決勝で1走を務めた。

「本当は2017年のほうが調子がよかったんです。日本選手権直前のレースでも圧倒的にタイムが出ていましたし、世界選手権の代表も狙えるなと思っていて。でも肉離れをしてしまって……。ただ怪我さえしなければ結果は出せると気づいたので、2018年は出すべくして出せた実績かなと。振り返っても、あの年がターニングポイントになったと思いますね」

 自身初の日本代表入りというステップを踏み、次なる目標は2020年に控える東京五輪だった。

「オリンピックの日本招致って、僕が4年生の日本インカレの最中に決まったんですよ。会場の旧国立競技場で、チームメイトと『東京決まった!』って盛り上がって。今でも覚えています」

東京五輪がコロナ禍で延期に…引退の決断

 その時点で、自身の陸上人生の終着地は、新国立競技場だと決めていた。だが、未曾有のコロナ禍により、東京五輪は1年延期が決定。木村は悩んだ結果、五輪シーズンを待たずして引退した。

「両親や周りからは『もう1年続けなよ』って言われましたし、自分のなかでも葛藤したけれど、最終的には『これも運命なんだな』って、意外とすんなり腑に落ちて。競技の最後をこんな形で終わるのはどうなんだという人もいるだろうけど、ちょうど陸上を始めて20年目の年でもあったし、むしろここまで続けさせてもらえたことに感謝という気持ちのほうが大きかったんですよね」

 その年の9月、全日本実業団選手権で現役最後のレースを終えた木村は、さっぱりとした気持ちでキャリアに終止符を打った。だが、その陸上人生は、自らの理想像に、思い描く結果が伴わないという葛藤とともにあった。

【次ページ】 「やっと陸上から解放される」…向かった先は大阪帝拳ジム!

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