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「お前の髪の毛も今日限りだな」山梨学院大を史上最速で箱根駅伝へ…創部2年目の“愚直な練習”とは?「今だったら絶対にアウトですよね(笑)」 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/01/04 11:00

「お前の髪の毛も今日限りだな」山梨学院大を史上最速で箱根駅伝へ…創部2年目の“愚直な練習”とは?「今だったら絶対にアウトですよね(笑)」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

1987年、創部2年目で山梨学院を箱根駅伝初出場に導いた上田誠仁氏。現在は同部の顧問

 基礎体力を身につけさせるのはもちろん、メンタル強化にも手抜きはなかった。母校の順大に頼み入れ、強豪校がどんな姿勢で練習に取り組んでいるのかをわからせるために、選手を合宿所に送り込んだ。夏合宿は長野の車山高原に選手を連れて行き、他校が集団で走っていればその最後尾にしれっと付かせた。

 現在、八王子市役所に勤める山田光は4人いた1期生の一人。1年目の練習を振り返り、こう苦笑する。

「朝練でいきなり20kmを走ることもあったし、韮崎の方まで行って帰ってくることもありました。途中で遅れちゃうとどこを走っているのかわからなくなって、この辺だろうとショートカットしたらうっかり先生の前に出ちゃってね(笑)。雷を落とされたこともありましたよ」

 1年目の予選会は人数不足を補うために短距離部から選手を借りて無理やりスタートラインに立たせた。当然ながら、その年は予選落ち。だが、何ごとも経験と、本戦は選手を連れて箱根まで見学に出かけた。

 山田が懐かしそうに振り返る。

「大手町から車に乗って、ずっとランナーの後を追いかけていった記憶があります。途中の脇道に車を止めて、選手が通過していくとまたそれを追いかける。箱根の貸別荘みたいなところに泊まって、復路も最後まで見ました。で、翌4日には1区の道を見てこいと。僕たちはそこまで詳しくコースを知らないから、途中で間違えて道に迷ってね。ランパンとシャツ一枚でしょ。もし雨だったら凍え死んでましたね」

「お前の髪の毛も今日限りだな」

 春になると、新入部員が30人近く入ってきた。ときに澤木に同行してもらいながら、上田が全国の高校を回って口説き落とした原石である。全国的にはほぼ無名の選手たちで、その中には後に漫画家として活躍する高橋真の姿もあった。

 北海道から上京し、特急あずさに乗り継ぎ、甲府の宿舎の前で初めて監督に挨拶した時のことを、高橋はよく覚えていた。

「伸ばし気味の前髪を見て、『お前の髪の毛も今日限りだな』って。翌日の朝練に顔を出すと、先輩がバリカンでビーって。今だったら絶対にアウトですよね(笑)。でも、ある意味あれで覚悟が決まりました」

 体育会の部員であれば丸刈りは当たり前。監督の前では直立不動で、口答えなどもってのほか。そんな時代だった。

【続きを読む】雑誌が読み放題のサブスク「NumberPREMIER」内の「お前の髪の毛も今日限りだな」山梨学院大学を史上最速で箱根駅伝に導いた“愚直な練習”とは?「樹海の中を走ったことも」【創部2年目の秘話】​で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

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