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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「一軍ではもう難しいのかな」DeNA三上朋也33歳が限界を悟った一球…その秋、通算114ホールドの生え抜き右腕は横浜を去った
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byShiro Miyake
posted2023/12/28 11:02
DeNAに9年在籍した三上朋也。ブルペンでは兄貴分的な存在だった三上が昨秋、横浜に別れを告げるまでを振り返る
「オフの時はなるべく野球から離れる努力はしていましたね。まあ普通に生活して、無になろうとしても野球はちらつきますよ。だから他のことに没頭したり、その方が結果的に野球の見え方が変わったりするので、オンとオフの切り替えは積極的にしていました」
またオンとオフではないが、新たな視点を持ちたくて2018年シーズンが終わると、オーストラリアン・ベースボールリーグのキャンベラ・キャバルリーに自ら志願して派遣をしてもらった。
「同じ日常を過ごすのに飽きたというか、面白さや刺激を求めていた時期でした。このままじゃ駄目だという気持ちもあったし、本当に行ってよかったなって。飽き性なんですかね? 次だ、次って違うことをやりたくなってしまうんですよ」
3~4年なだめすかしてやっていた
飽き性かもしれないが、逆に言えば好奇心が旺盛ということだろう。
「確かに新しいことに挑戦する時は、フットワークは軽い方だと思いますね。とりあえずやってみようって気持ちになりますから」
この気質が、現在の三上の姿勢や立場というものを作っているということなのだろう。
DeNAでの日々に暗雲が立ち込めたのが、2019年シーズン、開幕直後に右肘を痛め、5月にクリーニング手術をしてからだ。この年の9月には復帰をしたが、翌2020年は一軍での登板機会はわずか10試合。新しい変化球を身に付けるなどし、2021年は40試合に登板して存在感を見せたが、投球内容としては浮き沈みが激しいものだった。
「手術はターニングポイントだったかもしれませんね。痛みとはずっと付き合っていて、3~4年なだめすかしてやっていたんですけど、ついに我慢できなくなったといった感じでした。復帰して40試合投げたときも、自分が思い描いたパフォーマンスと現実にギャップが生まれていたのは確かなんです。ただ、そこは新しい自分を作ろうと、とにかくもがいていましたね」
一軍のマウンドではもう難しいのかな
そして2022年、三上にとって悪夢の瞬間が訪れる。8月26日のヤクルト戦(横浜スタジアム)、2点を追う7回表、三上はマウンドに上がった。2アウトを奪い、迎えたバッターは前打席で本塁打を放っていた村上宗隆。2球続けてストレートを投げると、外角に外れ2ボール。そして3球目に投じた143キロのストレートが真ん中の高めに入り、村上が強振。打った瞬間にわかる、天空を舞う大きな本塁打だった。