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プロ野球PRESSBACK NUMBER
20歳で驚きの引退“あのDeNA選手”はホテル清掃アルバイトを経て…田部隼人が語る“その後”「逃げちゃったのは自分」「初めての履歴書作成」
posted2023/12/28 06:04
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph by
Kota Inoue
横浜の寮を引き上げて故郷に帰ると、両親から「ずっと野球をやってきたわけだし、少しゆっくり休んだら? 野球以外の世界に触れるのもいいと思うよ」と労われた。
プロ野球選手からホテル清掃員に…
しかし、人間は生きているだけでお金がかかる。じわじわと貯蓄が減っていく現実に焦りを覚え、引退から約半年が経過した3月から、人生初のアルバイトをすることにした。
友人に勧められた求人サイトから応募し、松江市内のビジネスホテルで清掃員として働いた。
部屋のゴミを捨て、使用済みのベッドシーツを外し、真新しいシーツを設置する。ついこの前までプロ野球の世界で戦っていただけに、体力は人並み以上にある。業務をキツいと感じたことはなかったが、「やっぱり、お金を稼ぐって大変だな」。労働の大変さを噛みしめた。
アルバイトは続けた。だが、「ハローワーク」などに赴き、本格的な就職活動をするとなると、少なからず抵抗感があった。
「高卒でプロに入ったので、就職活動をしたこともなければ、職務経歴書、履歴書さえ書いたことがありませんでした。どうしたらいいのかわからなかったですし、『プロ野球選手でした』という履歴書を出して、『え? 野球選手……?』と変わったもののように見られてしまうのも嫌だなという思いもあって。他の人から見たら『野球選手って何ができるの?』と思われるかもしれない。たしかに、引退直後の自分は、パソコンが使いこなせるわけでも、営業のテクニックを持っているわけでもなかった。現実と向き合わなければいけない一方で、自分のやってきた野球を否定されることに抵抗がありました。プライドが邪魔していたんだと思います」
「元プロ野球選手の息子さんは、事業に興味ないか」
その折、転機が訪れた。父が働いている会社の取引先が事業の一環としてアスリートのキャリア支援をスタートさせ、人員を募集しているという。