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キタサンブラック「最後の有馬記念」をTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』はどう描いたか?「“ユタカ”コールではなく…」【ウマ娘考察#7】
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by©2023 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 3」製作委員会
posted2023/12/29 18:01
2017年12月24日の有馬記念がラストランとなったキタサンブラック。有終の美を飾った伝説のレースは『ウマ娘』の世界でどう描かれたのか
OPの歌詞を「回収」
道中、キタサンブラックは「勝ちたい、勝ちたい」と何度も呟く。これはアニメのオープニングテーマ『ソシテミンナノ』で最初に入っているモノローグと同じ言葉。オープニングを思い出す、鮮やかな回収を感じさせるシーンだ。
スタートから最後の直線まで、キタサンブラックは先頭のポジションを譲ることなく駆け抜ける。ピークアウトなど考えられないような圧倒的な逃走劇だった。実況は「これが、スターの引き際だぁぁ~っ!」と興奮してまくしたてていたが、モチーフとなったであろう「これが、男の引き際だぁぁ~っ!」という青嶋アナの実況も、それに劣らぬテンションだった。
キタサンコール、実際は…
場内に轟く「キタサン」コール。実際のレース場で巻き起こったのは「ユタカ」コールだった。10万人の大観衆が奏でるコールは圧巻。競馬場の大歓声を経験したことがない人は、できるなら、実際に現地で体験してからアニメをもう一度見てほしい。また違った感動を味わえるはずである。
なお、3人の友人でありライバルたちは、まだ現役を続けることとなる。史実では翌2018年、「あなたがターフからいなくなっても、私のレースは続くんだ!」と言ったサトノクラウンはドバイ遠征を皮切りに3戦して引退、「春先のレースをまず目標に……」とトレーナーに告げたサトノダイヤモンドは金鯱賞から国内で6戦し引退、京都大賞典で復活の勝利を挙げている。シュヴァルグランは2019年まで現役を続け、積極的に海外に打って出るなど2年間で10戦し、勝利はならなかったものの天皇賞(春)とドバイシーマクラシックという大レースで2着に入線した。
魂は次の世代に…
アニメのラストシーンはトレセン学園のオープンキャンパス。振り返ると、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの物語が始まったのも、TVアニメ第2期第1話で行われたオープンキャンパスからだった。ゴールは物語の新たなスタートライン。走りきった道のりはひとつの輪となり、彼女たちの魂はまた次代のウマ娘へと引き継がれていく。結末がわかっているからこそ為し得た美しい収束に、拍手を送りたい。<完>