Number的、ウマ娘の見方BACK NUMBER
キタサンブラック「最後の有馬記念」をTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』はどう描いたか?「“ユタカ”コールではなく…」【ウマ娘考察#7】
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph by©2023 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 3」製作委員会
posted2023/12/29 18:01
2017年12月24日の有馬記念がラストランとなったキタサンブラック。有終の美を飾った伝説のレースは『ウマ娘』の世界でどう描かれたのか
シュヴァルグラン、GI7戦目にして初戴冠
引退表明の報せを聞いたシュヴァルグランは「正直、ムカついた」と姉妹たちに語る。サトノクラウンと同じく6戦、同じレースに出走しながら、そのすべてで後塵を拝していたからだろう。そんな彼女の思いを聞いて、姉のヴィルシーナはライバルに「一度も彼女に勝てなかった」と語っていた。実際は同世代のジェンティルドンナを相手に2014年宝塚記念で1度は先着しているものの、一緒のレースで1着をとったことは競走生活の中で一度もなかった、そんなヴィルシーナの戦績を感じさせるやりとりだ。
ジャパンカップでは、キタサンブラックが絶好のスタートを決めて1年ぶりにハナを奪って逃げを敢行するが、最後の直線で粘りきれず、終始キタサンブラックをマークしていたシュヴァルグランの末脚に屈してしまう。アニメでは描かれていないが、史実ではキタサンブラックが最後に伸びを欠いたのは左前脚の落鉄があったからだと判明している。
しかし、レース後の光景を見るとほとんどのウマ娘が疲労困憊の様子だ。実際の記録を見ていくと、最初の1ハロン(約200m)を除いてすべての通過タイムが1ハロン12秒3以下。息を入れる間もない、身体に負担のかかるタフな展開だったのである。
そのような展開だからこそ、長距離でこそ活きると目されていたシュヴァルグランの能力が最大限に発揮されたのだろう。ともあれ、シュヴァルグランは23戦目、GI挑戦7戦目にして初めての栄冠を手にすることとなった。
GIレースを待つ徹夜組の存在も描かれる
【第13話】
いよいよクライマックス。カレンダーにあるように、モデルとなった2017年の有馬記念(作中では馬の点は2つ)は12月24日、クリスマス・イブの開催となった。サンタ帽が被せられている源義家像だが、モデルの像は府中・大國魂神社前のけやき並木の下に建てられている。