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ドジャースは“オオタニ資金”を貯めていた…日本ハムとエンゼルスに獲られても、揺らがなかった「オオタニ愛」12年物語
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byKirby Lee-USA TODAY Sports/AFLO
posted2023/12/17 06:00
大谷翔平の着替えを手伝うオーナーのマーク・ウォルター。12年前、高校時代からラブコールを送っていた名門球団の思いが結実するまでの物語
2022年、そして今年と、7月末のトレード期限前には、エンゼルスに対して真剣に獲得を打診してきた。いずれも、オーナーのアート・モレノ氏ら首脳陣が大谷放出を凍結したため、実現にはいたらなかった。
だからこそ、FAとなり、正々堂々と交渉できる今オフへかける意気込みは格別だった。昨オフは、際立った大型補強を踏みとどまり、エースのカーショー、さらに「DH」を務めるJD・マルチネスとは、長期契約ではなく、それぞれ1年契約にとどめた。開幕前の時点から「大谷資金」をある程度プールし、「DH枠」をフレキシブルにしておくなど、オフの争奪戦へ向けて着々と準備を進めていた。交渉が大詰めを迎えた際には、新たに再契約を結んだ救援右腕ジョー・ケリーに対し、背番号「17」の譲渡を打診し、快諾を取り付けたうえで、大谷からの最終返答を待った。
大谷の「後払い」に見える本気度
そんなドジャースの長年にわたる熱意は、大谷にも伝わった。年俸7000万ドル(約101億5000万円)の提示を受けた大谷にすれば、自分1人で総年俸の多くを占めてしまえば、チームは積極的な補強に動けず、将来的には成績が停滞する可能性も少なくない。そこで大谷自ら、今後10年間は年俸200万ドル(約2億9000万円)を受け取り、2034年から10年間にわたって6800万ドル(約98億6000円)が支払われる異例の「後払い契約」を提案し、チームに対して今後も補強を継続していくことを要望した。
「自分が今受け取れる金額を我慢して、ペイロール(球団総年俸)に柔軟性を持たせられるのであれば、僕は全然、後払いでいいです、というのが始まりですかね」
全員が勝ちに、同じ方向を向いていることが大事
今季まで11年間連続でプレーオフに進出しているとはいえ、世界一はコロナ禍で公式戦が60試合に縮小された2020年だけ。10年契約を結んだ大谷が、ドジャースの資金面にも配慮し、長期的な戦略にプラス材料をもたらそうとしたのも、すべては常に勝てる環境でプレーしたいという強い意思の表れだった。